1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03670172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
難波 雄二郎 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (50027322)
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Keywords | シグナル伝達 / リンパ球の増殖 / 蛋白リン酸化 / アクチン結合蛋白 / カルシウム |
Research Abstract |
ヒトT細胞をIL2で刺激するときわめて早期に細胞質内蛋白(65K蛋白)がリン酸化される。この蛋白を高度に精製し同時に同じT細胞株(JurKat)からアクチンを精製し、65K蛋白とアクチンとの相互作用を解析した。 上記アクチンをKCl100mM存在下に重合させてFーアクチンを作り、ここに65K蛋白を添加すると可視部の吸收スペクトルで短波長側の吸光度が時間とともに増加し、Fーアクチンのみでは沈澱しない遠心条件下(10,000×g15分)で沈澱するようになった。この結果はFーアクチンが65K蛋白によって更に巨大な粒子になった爲だと考えられ、電子顕微鏡で観察すると、この巨大粒子はアクチンせんい(Fーアクチン)が平行に架橋されたもの(束形成)であった。この反応はEGTA存在下では起るがCa^<++>存在下では起らない。又反応液にCa^<++>を添加しないでも試薬及び蒸留水に含まれるごく微量のCa^<++>の存在によりこの反応は阻害さける。次にCa^<++>濃度依存性をCaーEGTA bufferを用いて測定すると、Ca^<++>濃度が1×10^<-7>M以下でほぼ100%の活性を有するが、1×10^<-6>では活性は約20%に低下し、1×10^-では活性は完全になくなった。65K蛋白とFーアクチンとの結合はCa^<++>のあるなしにかかわらず起る故に、Ca^<++>がこの蛋白のCa結合ドメインに結合すると2つのアクチン結合部位のうちの1つが活性を失ない、Fーアクチンを架橋出来なくなり束形成が起らなくなると考えられた。IL2により65K蛋白がリン酸化されるとCa^<++>が結合していなくてもCa^<++>が結合したのと同様に束形成が阻害されることを示唆する実験結果が得られている。この様なFーアクチンと65K蛋白の反応はβーアクチンを用いた場合に起り骨格筋アクチンや平滑筋アクチンを用いた場合にはほとんど起らなかった。IL2による65K蛋白のリン酸化がアクチンの存在様式を変化させることにより増殖シグナルの伝達を行っている可能性が示された。
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[Publications] Namba,Y.;Ito,M.;Zu,Y.;Shigesada,K;& Maruyama,K.: "Human T cell 1ーplastin bundles actin filaments in a calcium dependent manner" Biochemistry. (1992)
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[Publications] Kondo,S.,Miyatake,S.,Kikuchi,H.& Namba,Y.: "Analysis of the close relationship between human astrocytomaspecific antigens detected by murine monoclonal antibodies and cーkit protoーoncogene product" Biochemical and Biopysical Research Communications. (1992)
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[Publications] Kondo,S.,Miyatake,S.,Kikuchi,H.& Namba,Y.: "Human gliomaーspecific antigens detected by monoclonal antibodies" Neurosurgery. (1992)
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[Publications] 難波 雄二郎: "新生理科学大系(7).抗体産生細胞の分化(分担執筆)" 医学書院 編集:野々村禎昭・小幡邦彦, 90-97 (1991)