1992 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト大腸癌細胞への段階的染色体移入による癌抑制遺伝子の研究
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03670186
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Research Institution | The Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 貴代子 (財)東京都臨床医学総合研究所, 腫瘍生化学研究部門, 研究員 (40124474)
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Keywords | ヒト大腸癌細胞 / 癌抑制遺伝子 / 単一染色体移入 / 癌形質抑制 / 微小核融合法 |
Research Abstract |
正常ヒト細胞由来のX染色体の一部が17番染色体へ転座したX-17染色体を含むマウスA9細胞から微小核を調整しHPRT欠損大腸癌細胞へ移入して得られたHAT耐性細胞中の17番染色体の確認は17番染色体短腕上のDNAマーカーを用いてサザンブロット法により行った。大きく偏平な形態に変化した17番染色体移入細胞の増殖特性を調べたところ、非移入細胞に比べ液体培地中での細胞増殖速度の抑制は認められなかったが、軟寒天培地中でのコロニー形成率の低下を認めた。また、ヌードマウスにおける造腫瘍性は非移入細胞に比べ腫瘍形成の遅延が認められた。一方、移入染色体の脱落した細胞では非移入細胞と同様な速度で腫瘍が形成された。以上の結果から、大腸癌細胞への正常17番染色体短腕の移入により形態変化とコロニー形成能の低下は認められたが、液体培地中での細胞増殖速度とヌードマウスにおける造腫瘍性は完全には抑制されないことが明らかになった。そこで17番染色体移入細胞ヘネオマイシン耐性遺伝子を持つ正常5番染色体をさらに移入した。G418選択培養により多核で細胞同士の接着性が認められないコロニーが形成されたが、これらのコロニーは初期の段階で増殖が停止してしまった。 大腸癌では複数の癌抑制遺伝子の不活性化が起こっていることが明らかになってきている。今回の結果は、17番染色体と5番染色体の移入により増殖能が消失したのは、もとの大腸癌細胞で不活化していた複数の癌抑制遺伝子のうち2種類が補われたためにより悪性度が低下した結果だと考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] K.Tanaka et al.: "Suppression of tumorigenicity in human colon carcinoma cells by inrtoduction of normal chromosome 1p36 region." Onocogene.in press. (1993)
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[Publications] M.Seki,K.Tanaka et al.: "Loss of allele of the APC gene in an adrenocortical carcinoma from a patient in a family of adenomatous polypossis." Human Gent.89. 298-300 (1992)
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[Publications] R.Yanoshita K.Tanaka et al.: "Genetic changes in both alleles of p53gene involved in the conversion of colorectal adenomas into early carcinomas." Cancer Res.52. 3965-3971 (1992)
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[Publications] 宮木 美知子 田中 貴代子 他: "多段階発癌過程におけるp53遺伝子異常の意義" 実験医学. 10. 964-968 (1992)