1993 Fiscal Year Annual Research Report
マンソン裂頭条虫擬充尾虫が産生する成長ホルモン様物質についての研究
Project/Area Number |
03670193
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
平井 和光 鳥取大学, 医学部, 教授 (20093940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 宗嗣 鳥取大学, 医学部, 助手 (60111126)
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Keywords | マンソン裂頭条虫 / 擬充尾虫 / 成長ホルモン / マクロファージ / システインプロテアーゼ / 成長ホルモン様物質 |
Research Abstract |
マンソン裂頭条虫擬充尾虫が産生する成長ホルモン(GH)様物質の特性を解明するために次のような研究を行った。GH受容体に結合し、GHモノクローナル抗体と交叉反応する27kD蛋白がシステインプロテアーゼ様物質であることが判明しているので擬充尾虫産生物質が抗体を切断する可能性が推測された。そこで、虫体抽出液が抗体を切断するか否かを観察するためにビオチン化抗ヒトIgG抗体を虫体抽出液とともにインクベートし、SDS-PAGE後ウエスタンブロッテイングすると、IgG抗体は切断されH鎖、L鎖以外に4本のバンドが認められた。そして、この抽出液のIgG切断能はE64及びLeupeptinで抑制されたが、Pepstatinでは抑制されなかった。さらに、精製27kD蛋白は2本のバンドを形成した。よって、本虫が産生するシステインプロテアーゼである27kD蛋白は宿主抗体を切断することが示唆された。一方、抗体依存性マクロファージの貪喰能に対する虫体抽出液の影響を観察するために、抗ヒツジ赤血球抗体と抽出液とをプレインクベートした後マクロファージを作用させるとマクロファージの貪喰能が抑制された。さらに、27kD蛋白の虫体内局在を明らかにするためにモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行ったところ、27kD蛋白は表皮下細胞層と虫体表面が染色され、そして虫体のシェデイング部位も染色された。 これらの結果から、27kD蛋白の存在意義は、宿主の抗体攻撃からの回避に機能するとともに擬充尾虫が宿主体内に迷入するために必要な体部離断のためにも作用する物質であることが示唆された。しかしながら、本年度の計画である27kD蛋白以外のGH様物質の精製とそのアミノ酸配列の決定は、虫体の量が不足し達成できなかった。今後、マクロファージのNO合成酵素のmRNA発現、サイトカイン産生そしてT,B細胞に対する影響、また27kD蛋白のcDNAクローニングへと研究を発展させたい。
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