1991 Fiscal Year Annual Research Report
ウェルシュ菌のθー毒素産生調節機構の分子遺伝学的解析
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03670213
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東 雍 大阪大学, 医療技術短期大学部, 教授 (60028371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今川 忠 大阪大学, 医学部, 助手 (10036478)
井上 公蔵 大阪大学, 医学部, 教授 (10028300)
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Keywords | ウェルシュ菌 / Clostridium perfringens / θー毒素 / 毒素産生調節機構 / a物質 / クロ-ニング |
Research Abstract |
ウェルシュ菌(C.perfringens)のθー毒素非産生変異株は、ある性質から2群に大別される。即ち、θー毒素の産生を正に調節すると考えられる低分子のシグナル物質(a物質)を産生(あるいは分泌・放出)するが構造遺伝子が変異しているために毒素を産生しないa群菌と、a物質を産生しないが毒素の構造遺伝子は正常で、a物質を加えるとθー毒素を産生するb群菌とに分けられる。当該年度には、a物質の部分精製とその調節系の生化学的および分子遺伝子学的な解析を試み、以下の成績を得た。 《A》a群菌の培養濾液の希釈と、それによって誘導されるb群菌のθー毒素活性の強さとの間には正の相関関係が見られるので、θー毒素を定量化する事に、よりa物質の相対活性を定量化出来るようになった。このa物質活性(Bufferで洗浄し、10倍に濃縮したb群菌の浮遊液に等量の被検液を加えて、37℃、30分間保温する事により検出される浮遊液上清中のθー毒素活性の強さで表す)の定量化はa物質の精製法の簡便化に寄与した。更に、a群菌の培養濾液をpH5.0以下に再調整して凍結乾燥すると、室温でもかなり長期間a物質の活性を保持できることから、試し実験によって部分精製が期待できるシリカゲル等の脱吸着カラムやSephadex G25などのゲルろ過用の濃縮サンプルとして用いる事が可能となった。更に、a物質の特異な性状のいくつかが明らかになった。即ち、1)a物質はa群菌のLog Phaseに培地中に検出され、Stationary Phaseには消失する。2)a物質を含む培養濾液(aーfil)を37℃に保温した洗浄b群菌液に加えると4ー5分でθー毒素活性が浮遊液上清中に検出出来る。3)aーfilをpH5.0にし、種々の温度に保つと37℃では1時間足らずで完全に失活するが、0℃では数時間で逆に活性が3倍も上昇し、24時間で失活する。ちなみにpH7.4では37℃で10分以内に完全に失活する。《B》一方,ウェルシュ菌の染色体DNAより、λgt10を用いてθー毒素遺伝子をクロ-ン化した。そして、十分長い上流域を保持しているいくつかのθー毒素遺伝子断片をシャトルベクタ-につないで大量に精製した。これをa、b両群菌にElectroporation法で導入する試みはまだ成功していない。PB6K株は10Kb前後のCryptic Plasmidを保有しているのでこれが何らかの障壁になっている可能性を考え、Plasmidを保有しない他のA型ウェルシュ菌よりa,b両群変異株を分離して同様の事を試みている。これによってa,b両群菌中でθー毒素の発現に差が認められれば、更に遺伝子工学的解析を進め、a物質の作用点・作用領域、機能などを解析する事により、θー毒素産生の調節機構を明らかにできると考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 今川 忠: "ウェルシュ菌のθ毒素産生に関与するa物質の性状ーPHおよび温度安定性ー" 日本細菌学雑誌. 46(1). 435-435 (1991)
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[Publications] 田中 一隆: "Clostridium perfringensの“a物質"について:他の菌種に於ける分布並びに部分精製の試み" 日本細菌学雑誌. 47(1). 106-106 (1992)
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[Publications] Imagawa: "An activity which restores theta toxin activity in some theta toxin deficient mutants of C.perfringens" Microbiol.Immunol.36(5). (1992)