1992 Fiscal Year Annual Research Report
毒素原性大腸菌変異株によるLTのAサブユニットの標的細胞侵入機構の解析
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03670225
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
辻 孝雄 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (60171998)
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Keywords | 毒素原性大腸菌 / 易熱性エンテロトキシン / コレラ毒素 / ニック / ADPリボシル化因子 / 人工変異導入 / アロステリック効果 |
Research Abstract |
毎年、開発途上国を中心に500万人の乳幼児が下痢症により死亡している。その原因菌として毒素原性大腸菌は20%を占めている。本菌の下痢原因物質として、易熱性エンテロトキシン(LT)が挙げられる。LTはコレラ毒素(CT)と構造及び下痢発現機構がにていると考えられている。従って両毒素の下痢機構の解析及びワクチン開発が急務とされている。 そこで我々は今回LTのAサブユニットの内、ニックに関与する部位を人工的に置換することにより、ニックの活性発現に対する機能を調べるために本研究を企画した。その結果Aサブユニットにニックが入ることにより、ARF(ADPリボシル化因子)との相互作用をAサブユニットが持つことが明らかになった。しかもARFはアロステリック効果によりCT、LTのAサブユニット活性に相乗的に働くことが明らかになった。またARFの細胞上どの部位に存在しているか未だに定かではないが、少なくとも細胞膜の内側より内部に存在していると考えられている。従ってAlフラグメントはARFと相互作用するためには細部膜内部に入る必要がある。そこでニックの重要性について調べてみた。一般に両毒素はトリプシン様蛋白分解酵素で切断されると考えられているArg192、メタロプロテアーゼの切断部位と考えられているSer194が存在している。そこでこれら各々をGly192Leu194と変換してみた。その結果Ser194-LT-Leu194は正常LTとPF活性の変化が無いのに対し、Arg192-LT-Gly192は正常LTに比べ、生物活性に変化がみられた。これはAサブユニットのニックはAlフラグメントがアデニル酸シクラーゼのGTP結合蛋白にたっする際、重要であると示すと共に、Arg192のニックがSer194のニックに比べて重要な働きをしていることを示している。以上のことからAサブユニットにニックが入ることにより、ARFとの相互作用が発揮されること、Arg192の切断がSer194の切断に比べ、PF活性発現、とくにAlフラグメントのGTP結合蛋白への到達に重要であると考えられる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Joel Moss, Takao Tsuji et al: "Interaction of ADP-ribosylation factor with Escherichia coli enterotoxin that contain an inactivating Lysine 112 substitution" Journal of Biological Chemistry. (1993)
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[Publications] Takashi Inoue,Takao Tsuji et al.: "Amino acid sequence of heat-labile enterotoxin from chicken enterotoxigenic Escherichia coli is identical to that of human H10407" FEMS Microbiol.Letters. (1993)
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[Publications] Nils Lycke,Takao Tsuji et al.: "The adjuvant of V.cholerae and E.coli heat-labile enterotoxins is linked to their ADP-ribosyltransferase activity." Eur.J.Immunol.22. 2277-2281 (1992)
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[Publications] Y.Ichinose,T Tsuji et al: "The protease from V.cholerae nicks argine at position 192 from the N-terminus of the heat-labile enterotoxin A subunit from enterotoxigenic E.coli" Eur.J.Epiderm.8. 743-747 (1992)
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[Publications] Takao Tsuji and Akio Miyama: "Heterogeneity among heat-labile enterotoxins produced by porcine enterotoxigenic Escherichia coli" Eur.J.Epiderm.8. 543-547 (1992)
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[Publications] Takao Tsuji,and Akio Miyama: "Chinese hamster overy cells produced an enzyme that nicks heat-labile enteotoxins from enterotoxigenic Escherichia coli" Eur.J.Epiderm. 8. 74-80 (1992)
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[Publications] 辻 孝雄: "毒素原性大腸菌の産生する易熱性エンテロトキシン(LT)の活性部位" 日本細菌学雑誌, 16 (1992)
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[Publications] 辻 孝雄: "毒素原性大腸菌の産生する易熱性エンテロトキシンの活性部位" 日本生化学会(生化学), 5 (1992)