Research Abstract |
欧米諸国等で組換えワクシニアウイルスの作製に汎用されている実験室株WR,およびWHO痘瘡ワクチン株LOからさらに低病原性株として分離されたLC16mO(mO)株を用いて,HBsAg遺伝子又はJEV・E遺伝子が挿入された組換えワクシニアウイルスの動物個体内における挙動を感染病理学的に検討した。即ち,異なった部位から異った接種法で動物(マウス,モルモット,ウサギ)に感染させ,組換えウイルスの生体内における増殖,分布,病原性,免疫の成立と生体内からの消失を解析した。その結果,末梢皮膚からの接種でいずれも発痘が観察され,皮膚擦過法では化膿細菌の2次感染を生じた。一方,皮内・皮下接種ではWRの組換え株で膿胞形成から出血反応が認められたのに対して,mOの組換え株では弱い皮膚反応しか認められなかった。しかも,ウイルス増殖は接種皮膚の有棘層に限局され,脾臓,肝臓,脳にウイルスは検出されなかった。他方,全身性感染を模した複腔内,静脈内接種では非組換えmO株の3日・5日目,mo組換え株では3日目の脾臓・肝臓に(1例/4例)少量のウイルスが検出されたものの,以後陰性となり,検出されたウイルス価については組換え株が低い値が示した。なお,全例とも脳では陰性であった。しかし,WR株,組換えWR株共に体重減少,2次発痘,後肢の痲痺が観察され,これらは死亡した。以上の結果は,脳内接種試験における中枢神経病変の強弱,in situ hybridzation法による脳内ウイルス分布,in vitroにおける弱毒性試験の成績と極めて良く一致した。従って,組換えウイルスの皮膚親和性,神経親和性と,ウイルス拡散,増殖・分布,病原性は相互に密接に関連していることが示唆された。また,組換えウイルスは非組換えウイルスより弱毒化され,その病原性は親株ウイルスに規定されることも示された。これらの実験小・中動物の知見をもとに,サル接種実験が現在進行中である。
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