1991 Fiscal Year Annual Research Report
経鼻接種ワクチンによるインフルエンザの予防効果増進のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
03670241
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
田村 慎一 国立予防衛生研究所, 病理部, 室長 (20100084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉田 毅 国立予防衛生研究所, 病理部, 部長 (50012779)
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Keywords | インフルエンザワクチン / 経鼻接種 / コレラトキシンBサブユニット / 上気道感染 / 下気道感染 |
Research Abstract |
ヒトのインフルエンザは、その症状が不顕性感染、上気道感染による鼻炎、咽頭炎等、下気道感染による気管支炎や肺炎等まで様々である。これまでの症状は、宿主の免疫状態やウイルスの感染部位の違いによって異なると考えられる。これら症状の大きくなる異なる2つのモデルマウスを開発するために、マウスに馴化したウイルス(PR8,HINI)の経鼻大容量感染と鼻腔限局感染を行った。大容量感染の場合、致死量のウイルスを20μl投与した。感染マウスには、1日目から高レベルのウイルス価が肺内に検出され、3日目に極大に達した。これらマウスは7日目前後にその9割以上が肺炎で死亡した。また、鼻洗浄液中にも感染1日目から低レベルのウイルス価が検出された。一方、鼻腔限局感染の場合、大容量感染の場合の10倍濃度のウイルスを1μlずつ左右鼻孔に滴下した。これら感染マウスでは、1日目に鼻洗浄液中にウイルスが出現し、3日目に最大になり、5日目以後減少した。また、肺には、最初ウイルスは検出されず、5日〜7日目に検出されるようになった。即ち、感染が上気道から下気道に拡大して行った。この条件では、感染マウスはすべて生残した。従って、大容量感染はヒトの下気道感染後、また、鼻腔限局感染は上気道感染のモデルになると考えられる。 次に、様々のワクチンをコレラトキシンのBサブユニットと共に経鼻接種したマウスにおいて、上気道及び下気感染に対する防御効果を検討した。上気道感染した場合、ワクチンと同じウイルスの感染やワクチンと同じ亜型の変異ウイルスの感染に対して完全な防御が成立した。この交差感染防御には鼻粘膜のIgA抗体が重要な役割を果てしていた。一方、下気道感染した場合、ワクチンと同じウイルスの感染に対しては完全な防御が、また、ワクチンと同じ亜型の変異ウイルス感染に対しては部分的な交差感染防御が成立した。この防御には、肺のIgG抗体が主要な役割を果たしていることが明らかになった。
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[Publications] Tamura,S.-I.,et al.: "Cross-protection against influenza A virus infection by passively transferred respiratory tract IgA antibodies to different hemagglutinin molecules" Eur.J.Immunol.21. 1337-1344 (1991)