1991 Fiscal Year Annual Research Report
ストロ-マ細胞とリンパ球の接着及び細胞間相互作用に関する研究
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03670246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
喜納 辰夫 京都大学, 胸部疾患研究所, 助教授 (30127071)
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Keywords | ストロ-マ細胞 / モノクロ-ナル抗体 / 接着分子 / 細胞間相互作用 / インテグリン分子 / サイトカイン / Stem Cell Factor / MーCSF |
Research Abstract |
今年度においては、造血支持細胞(ストロ-マ細胞)上の分子量107kD糖蛋白(gp107kD)に対するモノクロ-ナル抗体を作成して、これを用いて、既知の物質と異同、生化学的及び免疫学的解析を行なうことを目的として実験を行ない、以下の知見が得られた。 (1)ストロ-マ細胞膜蛋白をSDSーPAGEにより展開後、107kDバンドを切り出して、ハムスタ-に免疫して2種類のモノクロ-ナル抗体(HANAー2,HANAー5)を作成した。HANAー2及びHANAー5はともに107kDの表面蛋白を認識するがそれぞれが結合する分子は異なっていることが免疫沈降実験から示唆された。すでに報告されている種々の抗体との比較実験から、HANAー2はマウスのVCAMー1分子を認識していることが分かったが、HANAー5はこれまで報告されていない新しい分子を認識していることが考えられた。(2)得られたモノクロ-ナル抗体を種々のin vitro造血の実験系に添加して、造血に及ぼす影響を調べたところ、HANAー2はT細胞、B細胞の分化を抑制するが、ミエロイド系の分化は抑制しなかった。HANAー5はT細胞、B細胞のみならず、ミエロイド系細胞の分化も強く抑制した。(3)HANAー2はストロ-マ系細胞以外には発現されておらず、リンパ球とストロ-マ細胞との接着を弱く阻害すること、またそれが認識するVCAMー1がインテグリンの一つであるVLAー4をリセプタ-とする細胞接着分子であることから、TおよびB細胞の初期分化においてVCAMー1/VLAー4を介した細胞間相互作用が重要であることを示唆している。(4)HANAー5は正常のリンパ球及びミエロイド系細胞表面には発現されていないことから、その造血における抑制効果はストロ-マ細胞の造血支持能を直接抑制することによって、分化を抑制していると考えられた。PCR法を用いてHANAー5処理後のストロ-マ細胞のサイトカイン産生能を調べた結果、抗体処理によってStem Cell Factor,MyeloidーColony Stimulating Factorの産生が特異的に抑制されることが分かった。従って、HANAー5による造血抑制の一つの機構が、ストロ-マ細胞のサイトカイン産生の抑制であることを強く示唆している。 今後は、HANAー2及びHANAー5の造血細胞分化の分子機構をさらに詳しく解析すると同時に、HANAー5抗体が認識する分子の構造とそれをコ-ドする遺伝子のクロ-ニングを試みて行く予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kina,T.: "Identification of a 107KD glycoprotein that mediates adhesion between stromal cells and hematolymphoid cells" J.Exgerimental Medicine. 173. 373-381 (1991)
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[Publications] Ogawa,M.: "Expression and Function of Cーkit in Hemopoietic Progenitor cells" J.Exp.Med.174. 63-71 (1991)
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[Publications] Ikuta,K.: "Development of rs Tーcell subsets from fetal hematopoietic stem cells" Ann.N.Y.Acad.Sci.
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[Publications] 宮坂 昌之編集: "接着分子" メジカルビュ-社, 175 (1991)
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[Publications] 喜納 辰夫,他: "Annual Review免疫1992" 中外医学社, 350 (1992)