1991 Fiscal Year Annual Research Report
有機燐農薬の遅発性神経毒性を検出するための新しい実験動物系の確立
Project/Area Number |
03670269
|
Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
木根渕 英雄 高知医科大学, 医学部, 教授 (90045641)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 則之 高知医科大学, 医学部, 助手 (30133169)
|
Keywords | 有機燐農薬 / 遅発生神経毒性 |
Research Abstract |
有機燐化合物は動物のコリンエステラ-ゼ活性を阻害して急性中毒を起こす。この作用が殺虫剤に応用されている。ところで少数の有機燐剤では急性中毒から回復して1〜3週後に発症する特異的な遅発性神経毒性が認められる。両側性に下肢の運動失調で始まり、麻痺は次第に上行して重症例では呼吸筋麻痺で死に致る。本毒性が最初に発見されたのはトリオルトクレシル燐酸(TOCP)であり、1930年に合衆国で発生した大規模な中毒事故が契機となった。TOCPは現在わが国でプラスチック可そ剤として大量に使用されている。その後有機燐殺虫剤の中からも本毒性をもつミパホックス(1951年)、レプトホス(1971年)、シアノヘンホス(1979年)が発見され、いずれも生産中止となった。農林水産省は1985年に新農薬登録時に必要な毒性試験実施要領を改正し、遅発性神経毒性試験を新たに加えた。ニワトリに急性中毒の際の半数致死量以上を経口投与し、アトロピン等で救命した後、21日間、歩行などの運動神経障害の有無を観察することが義務付けられた。筆者らはニワトリに代えてウズラを本毒性検出のための実験動物として確立しようと試みている。1989年にStumpf(ミシガン州立大)らは、フェレット(ヨ-ロッパ毛長いたち)にTOCPを投与した実験で、経口投与よりも経皮投与の方がはるかに強く本毒性を発現させると報告した。そこでわれわれも追試を行った。はじめにゴルフ場で大量に使用されているEPNでも本毒性を認めたという報告(但し量反応関係が不明確)があるため、EPNを塗布する実験から開始したが、急性毒性が強すぎるためアトロピンを使用しなければならないことがわかった。その前に本毒性の陽性モデル物質とされているTOCPを用いて、基準となる投与方法を確立することが望ましいと考えて実験を繰返している。経皮投与は農林水産省が指定する現行の試験法よりも容易で確実な方法であることが次第に明らかになりつつある。
|
-
[Publications] H.Kinebuchi,N.Shiraishi and Y.Konishi: "Hypocalcemia in Delayed Neuropathy caused by organophosphates" Proceedings of Fourth International Symposium:Neurobehavioral Methods and Effects in Occupational and Environmental Health.(Tokyo,July,1991).
-
[Publications] H.Kinebuchi: "Delayed Neurotoxicity in Organophorus Pesticides" Proceedings of Fourth International Symposium:Neurobehavioral Methods and Effects in Occupational and Environmental Health.(Tokyo,July,1991).