1991 Fiscal Year Annual Research Report
移植による血液系標識遺伝子の変化とその法医学的問題点に関する研究
Project/Area Number |
03670307
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
池本 卯典 自治医科大学, 医学部, 教授 (90048942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 えみ子 自治医科大学, 医学部, 助手 (20208341)
土田 修一 自治医科大学, 医学部, 助手 (20217326)
岩本 禎彦 自治医科大学, 医学部, 助手 (10232711)
梶井 英治 自治医科大学, 医学部, 講師 (40204391)
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Keywords | 骨髄移植 / 遺伝子治療 / 抗原転換 / 個人識別 / 免疫抑制 / 血液型 / 親子鑑定 / 遺伝標識 |
Research Abstract |
法医学上の個人識別において最も問題となることは、調査対象の標識遺伝子の永久的不変である。指紋が万人不同・永久不変といわれて久しいが、血液型(広義の)もまた同様の評価を受けている。 それが、近代医療の先端的治療である移植技術の発展、免疫抑制剤の病発などに伴って、飛躍的に普及し始めた骨髄移植によって根底からゆるぎ始めた。すなわち、從来の輸血医療においては、ABOシステムとRhシステムの適合は不可欠の条件と考えられ、医療現場の隅々まで認識され、守られてきた。 しかし、骨髄移植においては、前述の免疫抑制剤シクロスポリンの開発により、HLAシステムの可及的適合のみを求め、人体全般に分布しているABOシステムすら無視して移植は進めらるようになった。勿論3.8000万種にも細分類されるHLAシステムに加え、さらに、ABO、Rhの適合を要求することは、医療の現場においては極めて無理なことであろう。 これは、法医学上の検査においては重大な問題である。親子鑑定におよび個人識別の実際において、不変の筈の標識遺伝子に後天的変異が多発すれば、例え犯罪鑑識に遭遇する機会は稀であるとしても、常にこの亊実に注目しながら鑑定を進めなければならない。そこで、可及的多数の骨髄移植例について調査し、移植前後における遺伝標識特に、赤血球型血清猛、酵素型、唾液型、血小板型などの変容を検討した。 本年度は、特に赤血球型の挙動に注目したが、ABO、MNS_S,P、Rh、Lutheran Doffy、Kidd、Xgなど、どの赤血球型も、患者と提供者の赤血球抗原型の異なる場合には、約2ヶ月後(骨髄移植後)には、すべて、提供型に転換することが判明した。これらの検査は凝集反応のみならず單クロ-ン抗体を用いたフロ-サイトメトリ-によっても確認された。
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[Publications] Ikemoto Shigenori,Kajii Eigi et al: "Behavior of genetic markers in recipient after bone marrow transplantation and problems in forensic medicine" Jaurmal of Forensic Science. 33. (1990)
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[Publications] Taketomi Akira,Ikemoto Shigenori: "The chance of paternity exclution after bone marrow transplantation" Acta Criminologiae et Medicina Legalis Japonica. 57. 209-214 (1991)
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[Publications] 池本 卯典他: "電気泳動法によって検出される遺伝標識の骨髄移植における挙動について" 生物物理. 35. 303-306 (1991)
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[Publications] 池本 卯典,梶井 英治: "赤血球系前駆細胞の血液型抗原発現機序" Pharma Medice. 9. 13-17 (1991)
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[Publications] 池本 卯典: "血液病学(三輪史朗・青木延雄・柴田昭編)" 文堂堂(東京), (1992)