1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03670350
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今関 文夫 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (40223325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野瀬 晴彦 千葉大学, 医学部, 医員
多田 稔 千葉大学, 医学部, 医員
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Keywords | p53遺伝子 / 癌抑制遺伝子 / 肝細胞癌 / Polymerase chain reaction / 直接塩基配列決定法 / ヘテロ接合性の消失 / Southern blot hybridization |
Research Abstract |
本邦では年間約2万人が肝癌により死亡しており、その多くはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アルコールなどによる慢性肝障害を発生母地としているが、肝細胞が何故癌化するのか、未だ解明されていない。発癌は遺伝子異常の蓄積により生じ、特に発癌遺伝子の活性化と癌抑制遺伝子の欠損、異常が重要であると考えられている。肝癌の多くの例では既存の発癌遺伝子の異常は認められていない。そこで、発癌に抑制的に働くと考えられる癌抑制遺伝子の中で特にその性状が詳しく研究されており、ヒトの種々の癌で異常の報告されているp53遺伝子について、肝細胞癌20症例を対象に解析した。p53遺伝子のエクソンの殆んどの領域を含むエクソン2〜10の各エクソンを増幅する合成オリゴヌクレオチドは昨年度に作製した。これらのブライマーで凍結肝組織から抽出したDNAを用いてp53遺伝子の各エクソンをpolymerase chain reaction(PCR)法で増幅した。PCR反応産物はゲル電気泳動・染色にて確認後、クローニングせずにその塩基配列をdideoxy法で直接決定した。p53遺伝子の変異は20例中3例(15%)に認められ、コドン176(エクソン5)、236(エクソン7)294(エクソン8)の3ヶ所で、アミノ酸の変わる変異が2つ、停止コドン変異が1つであった。昨年度に解析したp53遺伝子のある第17染色体短腕のヘテロ接合性の消失(LOH)の結果とあわせると、p53遺伝子の変異とLOHの両者は2例に、LOHのみは3例に、p53変異のみは1例(LOHは未検)に認められ、20例中6例(30%)・にp53遺伝子の異常がみられた。径3cm未満の小肝細胞癌3例にはp53遺伝子の異常は認められず、また門脈腫瘍塞栓や肝内転移のない8例中7例にも認められないことから、p53遺伝子の異常は進行した肝癌に生じる変化であり、肝発癌における初期の段階ではなく、後期の癌の進展に関与していると考えられた。
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[Publications] Haruhiko Nose, et al.: "p53 gene mutations and 17p allelic deletions in hepatocellular carcinoma from Japan." Cancer.
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[Publications] Fumio Imazeki, et al.: "p53 gene mutations in gastric and esophageal cancers." Gastroenterology. 103. 892-896 (1992)