1993 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞の発癌に関与する癌遺伝子と肝炎ウイルス遺伝子
Project/Area Number |
03670362
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
湯本 泰弘 岡山大学, アイソトープ総合センター, 助教授 (30033369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出 典男 岡山大学, 医学部・附属病院, 講師 (20142333)
花房 直志 岡山大学, アイソトープ総合センター, 助手 (00228511)
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Keywords | 肝細胞癌 / LOH / 肝炎ウイルス / p53 / 癌抑制遺伝子 |
Research Abstract |
ヒトがんの多段階発生,進展過程には発癌遺伝子や細胞の増殖分化に関与する遺伝子群の発現の質的変化が重要な役割をはたしている.慢性肝炎や肝硬変を背景とした腺腫瘍形成や早期肝細胞癌の中に多段階的に増殖性の高いサブクーロンが出現する。組織学的異型度の段階的こう進として捉えられている.肝細胞癌(HCC)では染色体にB型肝炎ウイルス(HBVと略す)のゲノムの組み込みがしばしば見られるほか、HBVの発癌のメカニズムとしてHBVのX遺伝子のトランス作用による発癌及び細胞側遺伝子活性化も報告された。患者血清のHCV抗体の測定を行うretrospective studyで、106例の肝硬変(LC)が6年間に37.5%頻度でHCCへとなり、HCV,HBV関与のLC症例の43%、ウイルス性LCの23%がHCCへと移行した.HBs抗原とHCV抗体の両者陽性の肝細胞癌が20%高頻度に検出されたことは注目すべきことである。HCC患者血清の60-70%にHCV抗体が陽性に検出されるとともに、HCVゲノタイプのII型が慢性肝炎、肝硬変に比較して肝細胞癌の血清で高率に検出された。さらにHCCの組織の中にHCV-RNAを25%に検出したことなどから、HCCとHCVの間にも極めて密接な関係があることが推定される. 我々は手術及び剖検による肝細胞癌34例(小肝癌(sHCC)3例、進行癌(aHCC)31例)および同一患者の担癌肝からDNAを抽出して、分化度の低い進行癌31例中8例でPCR-SSCP法によりp53遺伝子のエキソン4-9の領域の変異を25.8%の頻度に見いだしたのに対して早期の小肝癌や、高分化型進行癌に於いて変異を認め得なかった。p53遺伝子の変異は肝癌の後期に出現する事を示した。各染色体上のマーカーのloss of heterocigocity(LOH)を検出するためにRFLP解析を行ったところaHCCではLOHの頻度の最も高いものはpYN22(54.8%)であり、比較的頻度の高いもののLOHの陽性率はcMC5.61(41.9%),cC111-237(45.1%),MCT35.1(45.1%),p79-2-23(41.9%),EFD139(38.7%)などであった。進行癌では高頻度にヘテロ接合体の消失を認めた。一方小肝癌においてLOHの頻度が少なかったことはヒト肝細胞癌の多段階発癌を示唆しているものと考える。
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[Publications] Y.Yumoto,他: "Estimation of remnant liver function before hepatectomy by means of technetium-99m-diethylenetriaminepentaacetic acid galactosyl human albumine." Cancer Chemo Pharmacol. 33 (in press). (1994)
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[Publications] H.Nagai,他: "Aberration of genetic DNA in association with human hepatocellurallular carcinomas detected by 2-dimensional gel analysis." Cancer Research. 54 (in press). 1-6 (1994)