アルコール性肝障害の発生機序に関する研究ー肝微小循環動態よりの解析ー

1992 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 03670378
• Research Institution: Keio University
• Principal Investigator: 浜松 永昌 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00208597)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 末松 誠 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (00206385) ; 加藤 眞三 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (30177448)
• Keywords: 肝微小循環 / エタノール

Research Abstract

エタノールの急性投与が肝微小循環に及ぼす影響を,固形飼料で飼育したWistar系雄性ラットを用いて観察した。ラットに経胃的に20%エタノール(3.0g/kg,15ml/kg),30%エタノール(4.5g/kg,15ml/kg)及び40%エタノール(6.0g/kg,15ml/kg)を急性投与し,蛍光色素で標識した赤血球が肝類洞を通過する像を蛍光レンズを装着したSITカメラで撮像した。ビデオテープに録画した像をIM-Capiflowで解析し,赤血球速度を測定した。コントロール群(生理食塩水15ml/kg,経胃的投与)では肝類洞を通過する赤血球の速度に有意な変化を認めなかったが,20%エタノール群では投与後5分より赤血球の速度は上昇し,投与後10〜20分の間に最高値(投与前の1.5〜2.0倍)となり,60分間の観察時間中投与前値を上回った。また,肝類洞を通過する赤血球の速度はコントロール群,20%エタノール群ともに中心静脈域で最も速かった。30%エタノール群では,赤血球の速度は上昇する群と下降する群が認められたが,40%エタノールでは,60分後には全例において赤血球の速度は投与前値を下回った。また,経胃的に20%エタノール及び40%エタノールを急性投与し,門脈血圧と動脈血圧を経時的に60分間測定した。コントロール群では門脈血圧の上昇は認めなかったが,20%及び40%エタノール投与群では全例に門脈血圧の上昇を認めた。動脈血圧はコントロール群,20%及び40%エタノール投与群のいずれも有意な変化を認めなかった。40%エタノール投与群で門脈血圧の上昇にも拘わらず,肝類洞での赤血球の速度が低下したことは,高濃度エタノール投与下では肝類洞で血流障害を惹起する何らかの機序の存在することが示唆された。以上の結果は,第33回消化器病学会大会,第78回消化器病学会総会及び第6回国際医学生物学学会において発表した。

Research Products

• [Publications] 浜松 永昌,加藤 眞三 末松 誠 他: "急性エタノール投与時の肝微小循環動態の解析ーFITC標識赤血球を用いた検討ー" 日本消化器病学会雑誌. 88. 2053- (1991)
• [Publications] 浜松 永昌,加藤 眞三,末松 誠 他: "急性エタノール投与時の肝微小循環動態の解析ー特にエタノール濃度との関係についてー" 日本消化器病学会雑誌. 89. 312- (1992)
• [Publications] H.Hamamatsu,S.Kato M.Suematsu,H.Ishii,et al: "Quantitative analysis of acute ethanol induced changes in hepatic microcirculation" Alcohol and Alcoholism. 27. 77- (1992)