1992 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺小細胞癌における神経細胞接着分子(N-CAM)の発現とその機能
Project/Area Number |
03670400
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川瀬 一郎 大阪大学, 医学部・第3内科, 講師 (10161324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 伸一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
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Keywords | 肺小細胞癌 / 神経細胞接着分子 |
Research Abstract |
前年までの成果として、当研究室で樹立した肺小細胞癌培養株を免疫源としてマウスモノクローナル抗体を作成し、この抗体が145KDaのN-CAM isoformを認識している事、およびこの分子が6.2KbのmRNAにコードされる事、を報告してきた。現在、ヒトN-CAMとしては、NK細胞、筋細胞、神経芽細胞腫の一次構造が判明しているのみであるが、筋型N-CAMについては特異的と考えられる配列が認められている。肺小細胞癌においても、特異的配列が含まれる可能性があり、診断、治療上の有益性が示唆される。 この肺小細胞癌に発現する145KDa N-CAM isoformの全一次構造を決定するため、当研究室で樹立した培養株OS2-RよりcDNAライブラリーを作成した。筋型N-CAMを参考にcDNAプローベをRT-PCR法を用いて作成し、このライブラリーをスクリーニングしたところ、6個の陽性クローンを得たが、このうち、2クローンをシークマンスすることにより全長のcDNA塩基配列を決定した。 その結果、VASEエクソンと呼ばれる30塩基対の構造を欠落していることと、アミノ酸置換を伴わない一塩基置換が存在することの2点を除けば、神経芽細胞腫に発現する140KDa N-CAM isoformの一次構造と基本的に同一であることが判明した。 結論として、肺小細胞癌に発現するN-CAM分子の特異性を利用した診断、治療への応用は困難と考えられるが、この分子の発現は、予後や治療法の選択に、特に非小細胞肺癌において重要な情報を与えてくれる可能性があり、さらに今後研究の必要性が増すものと思われる。
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