1993 Fiscal Year Annual Research Report
ラット大脳皮質内移植青斑核神経細胞に対する神経栄養因子
Project/Area Number |
03670414
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坂戸 俊一 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (10142275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手 芳彦 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (10100835)
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Keywords | 青斑核 / ノルアドレナリン / 神経細胞移植 / 海馬 / 脳弓切断 / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
はじめに:我々は、中枢神経系の神経細胞の移植実験を行ない、移植細胞とホストの神経系との相互関係を、神経栄養因子という概念を念頭に置いて考察してきた。昨年度までは、ラット胎仔青斑核より採取したノルアドレナリン(NA)作動性神経細胞を成熟ラット前頭葉皮質内に移植し、移植細胞によるNA産生が、移植部位に投射するホスト内因性NA神経の事前の除去の有無により影響を受けるか否かを検討してきた。結果は否であった。本年度は、移植部位を海馬とし、海馬の主要な求心性および遠心性神経経路の一つである脳弓・海馬釆(F-F)の切断が、移植細胞のNA産生に与える影響を検討した。 材料と方法:胎生16日ラット胎仔脳より脳幹部分を切りだし、青斑核NA神経細胞を含む神経細胞浮遊液を作製、成熟ラット海馬内に移植した。ホストとなる成熟ラットは、それに加える処置により次の4群に分けられた。なお4群とも、以下の実験開始に先だって実験側の上頸神経節切除を受けた。第1群:前処置なしで移植のみ施行。第2群:前処置も移植も施行せず。第3群:前処理としてF-F切断を行ない、その1週間後に移植を施行。第4群:F-F切断のみを施行し移植はなし。各群とも移植後6週の時点に合わせて屠殺し、海馬内のNA濃度を測定した。比較はt検定によった。 結果:海馬NA濃度は第1群210±110ng/gtissue(n=9),第2群207±83(n=3),第3群139±63(n=9),第4群65±51(n=3)であった。 考察と結論:第1群および第2群のNA濃度は、脳弓経由の内因性NA神経投射が無傷なため、F-F切断を受けた第3群および第4群に較べ高値であるが、第1群と第2群の間に差は認められず、F-F切断のない場合には移植された神経細胞によるNA産生はほとんどないものと考えられた。一方、第3群と第4群間の差は有意であり、移植細胞によるNA産生が確認された。同系統(ここではNA系)の破壊のみでは栄養効果の発現が認められないのに対し、多系統の求心性および遠心性の神経系が障害された場合には、海馬内に移植細胞に対する栄養効果(栄養因子)の発現する可能性が示唆された。
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