1991 Fiscal Year Annual Research Report
単核球DNAヒストグラムプロフィ-ルによる肝移植の免疫学的モニタリング
Project/Area Number |
03670595
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中島 洋介 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00142381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 博重 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20075071)
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Keywords | 肝移植 / 拒絶反応 / 単核球 / DNAヒストグラム |
Research Abstract |
【末梢血単核球DNA分析による拒絶反応判定の試み】 肝移植前後の単核球DNAヒストグラムをフロ-サイトロトリ-を用いて経時的に分析し(SG2M%)、同時に施行する生化学的検査および生検組織診と比較することにより、単核球DNA分析が拒絶反応の非侵襲的な新しい早期診断法たり得るかを検討した結果、以下の結果を得た。 1雑種成犬を用い同所性同種肝移植を行った。免疫抑制剤を投与しなかった無処置群(n=5)では、SG2M%は移植前10.2±0.6、拒絶前6.4±0.7であったが、その後血液生化学検査に異常を認めるより約2日早く15.6±0.7と著明に上昇した。SG2M%上昇時に施行した移植肝生検組織診は早期の急性拒絶反応所見を示した。 2免疫抑制剤投与群(FK0.15ー0.2mg/kg/day,i.m.、CsA7mg/kg/day,i.v.)において、拒絶を認めなかった場合(n=4)、SG2M%は移植前8.8±0.6に比して術後3.8±1.1と低値を維持した。 3.免疫抑制剤投与群(FK0.1ー0.15mg/kg/day,i.m.、CsA5mg/kg/day,i.v.)では、免疫抑制剤投与にもかかわらず、6例に合計9回の拒絶反応を認めた。SG2M%は拒絶前4.1±0.6(n=6)から拒絶時13.6±1.3(n=9)に上昇した。この変化は生化学的検査よりも早期に出現し、組織学的には急性拒絶反応が確認された。またSG2M%の変動には免疫抑制剤の種類による差異を認めなかった。 4前記9例の急性拒絶反応中ステロイドパルス治療にてレスキュ-可能であった5例では、SG2M%は5.6±0.6と再び低下し、組織学的にも拒絶反応は軽快した。 以上より、隼梢血単核球DNA分析は、肝移植における急性拒絶反応の早期判定指標となるものと考えられた。しかしながら、今回の実験結果からは、肝移植における他の合併症特に感染症との鑑別が可能か否かについては確認できなかった。
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