Research Abstract |
in vivoにおいて,手術侵襲によって,術中からcyto kine(1Lー6,OーGSF)が上昇し,流血中の顆粒白血球(PMN)が活性化する。PMNは,活性酸素産生能,殺細菌能が上昇しており,これが肺胞上皮細胞や血管内皮細胞障害の原因と考えられた。一方,健常人より採取したPMNは,ホルモンによっては活性化されず,TNFやCーGSFなどのサイトカインによって活性化され,これは濃度依存的であった。 また,PMN活性化を抑制する試みとして,術前にステロイドあるいは蛋白分解酵素阻害剤を投与したところ,蛋白分解酵素阻害剤には効果が認められなかったが,ステロイドには,サイトカイン分泌抑制作用(1Lー6,C-GSF)やホルモン分泌低下作用(成長ホルモン,グルカゴン),cyclic AMP上昇抑制などの効果とともに,循環系の安定(脈拍),水分・電解質代謝の改善などがみられ,PMNも活性化が抑制された。 以上の結果から,侵襲によるサイトカインの分泌がPMNの活性化やホルモン分泌を介して生体に多大な影響を与えていると考えられ,この初期のプロセスが,手術開始直後の皮膚切開とこれにともるう局所の単球あるいはPMNの活性化とサイトカイン分泌を励起し,さらにPMNを介して,血管内皮を障害していると考えられた。この血管内皮の障害には細胞接着因子が大きくかかわっていると考えられ,接着因子の抗体を用いて、PMN活性化の阻害や血管内皮細胞の保護の実験を継続する予定である。さらに,混合培養系を用いて,in vitroにおける細胞障害の過程とその防御について,接着因子抗体や薬剤(ステロイド)の効果を実証し,臨床例におけるステロイドのPMN活性化阻害効果について,実験的に研究をすすめるつもりである。
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