Research Abstract |
原発性肺癌切除例を対象に核DNA量,増殖細胞核抗原(PCNA),癌抑制遺伝子p53,核小体形成体AgNORなどを測定評価し,悪性度の指標や生物学的予後因子としての意義について検討した.核DNA量はパラフィン包埋ブロックから得た検体にpropidium iodideによる核染色を行ってフローサイトメトリーにて測定し,DNA‐diploid腫瘍(Diploid)とDNA‐aneuploid腫瘍(Aneuploid)に分類した.増殖細胞核抗原(PCNA),癌抑制遺伝子p53,核小体形成体AgNORもパラフィン材料を用いて測定した.結果は以下のごとくである. 1.核DNA量の測定は原発巣の94.7%で可能であり,原発巣556例の測定の結果,Diploidは165例(29.7%),Aneuploidは391例(70.3%)で,原発巣がDiploidで,かつ,リンパ節転移を認めた症例77例中26例(33.8%)で転移巣にAneuploid細胞の出現を認めた.また,原発巣リンパ節転移巣ともにAneuploidでも,それぞれの最大DNA指標には全く相関を認めなかった.この原発巣転移巣間のDNA ploidy heterogeneityは腺癌でより高率であった.多変量解析の結果,核DNA量は年齢,性,腫瘍径,術後病期,術後TNM因子,組織型,分化度などとは独立した予後因子であり,リンパ節転移陽性例に限定しても転移巣の測定結果も加えることで有用な予後因子となることが示された. 2.PCNA標識率やp53蛋白発現陽性率はリンパ節転移陽性例や肺内転移陽性例に有意に高く,予後にも有意差を認めた.また,DNA‐aneuploid群をPCNA標識率で分類すると,高標識率群が予後不良である傾向を認めた. 3.AgNOR数は腫瘍組織では正常細胞に比し有意に多かったが,臨床病理学的因子との有意な関連は認めなかった. 4.これら予後因子の臨床応用の可能性について,手術の補助療法としての化学療法や免疫療法の治療成績をretrospectiveに検討したが,観察期間が短く,今後,prospectiveな研究が必要になるものと判断された.
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