1991 Fiscal Year Annual Research Report
婦人科癌における癌遺伝子点突然変異および癌抑制遺伝子欠失の予後への影響について
Project/Area Number |
03670795
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
工藤 隆一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70045409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水内 英充 札幌医科大学, 医学部, 講師
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Keywords | 癌遺伝子 / 点突然変異 / 癌抑制遺伝子 / 予後 / 婦人科癌 |
Research Abstract |
子宮体癌の新鮮凍結組織からDNAを抽出し、polymarase chain reaction(PCR).restriction fragment polymorphism(RFLP)を利用し、KーRAS codon12の点突然変異を検出した。59例中8例に点突然変異が認められたが、これらの陽性症例の予後は極めて不良であり、急速な進展を来たし死亡する症例が多く存在した。また、卵管癌のパラフィン切片からDNAを抽出し、同様に検討した結果、7例全例にKーRAS codon12の点突然変異が認められ、7例中5例が死亡していた。以上のように、KーRAS点突然変異は癌の進展に影響を与えていることが示唆された。このKーRAS点突然変異が癌の進展をもたらす機序を癌細胞の増殖能、または浸潤能の観点から検討を行っている。AgNORはribosomal DNAがRNA polymeraseにより、ribosomal RNAに転写される領域であり、蛋白質合成に関与し、細胞増殖能との関連が示唆されている。RAS点突然変異を有する症例のAgNOR数は有しない症例に比較し、その数は多いものの有意差は認められなかった。このことより、RAS点突然変異の癌進展の作用点としては細胞増殖の他に主要な要因が存在する可能性が示唆された。そこで、癌細胞浸潤能を検討するためin vitro invasion assay法を用いて検討した。分化型腺癌であるSNGーII,Ishikawa株は低浸潤性を示し、両者ともRAS点突然変異は認められなかった。癌抑制遺伝子であるp53のmutant p53の免疫組織学的検討では体癌46例中6例(15%)にmutant p53が認められたが、陽性症例でも一部の細胞は陰性であり、suppressor geneの存在にheterogeneityが示唆された。これは培養細胞でも同様の所見が得られた。また、RAS点突然変異とmutant p53陽性症例は必ずしも一致しなかったが、両者の数が少ないため今後症例を増やしさらに検討の予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Mizuuchi.H: "Clinical implication of Kーras mutations in malignant cpithclial tumors of the eendometrium" Cancer Rescarch. (1992)
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[Publications] 工藤 隆一: "予宮体癌の分子生物学的特性" 腫瘍鑑別診断アトラス 子宮体部. 文光堂. (1992)
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[Publications] 水内 英充: "子宮体癌におけるKーras点突然変異検出の意義" 産婦人科の治療. 64. 118 (1992)