| Research Abstract |
本研究では,子宮頚癌の浸潤・増殖動態の解明を目的として,特に癌と間質の接点における生物学的反応に注目し,癌細胞の増殖に対してautocrine,paracrineに作用する種々の増殖因子が,その浸潤能に如何なる影響を与えているかをまず検討した.平成3年度は,細胞外基質成分としてLaminin(La),CollagenIV(CO),その融解酸素としてTissue Plasiminogen Activator(tーPA)に着目し,子宮頚癌培養細胞(OMCー1:子宮頚部扁平上皮癌株,OMCー4:子宮頚部腺癌株)の増殖やLa,Co,tーPA産生能に対するEpidermal Growth Factor(EGF)とTransforming Growth Factor(TGF)ーβの効果について検討した.細胞増殖はcell countにより評価し,各培養上清中へのLa,Co産生量はRIA法,tーPA産生量はEIA法により測定した.なお生体内現象を想定し,EGFとTGFーβの添加実験は生理的濃度(10^<ー10>M)で行った.その結果,1×10^7個細胞のLa産生能(U/ml/wk)は,OMCー1;7.5,OMCー4;0.9,Co産生能(ng/ml/wk)は,OMCー1;2.5以下,OMCー4;62.0,tーPA産生能(ng/ml/M)は,OMCー1;1.5以下,OMCー4;65.9であった.また増殖曲線との対比から,La,Coは対数増殖期初期に主に産生されることが判明した.OMCー1の増殖はEGFにより促進,TGFーβにより抑制されたが,OMCー4では有意な変化は認められなかった.一方,OMCー1のLa,Co,tーPA産生能はEGF,TGFーβにより変化しなかったが,OMCー4では,La,Co産生能はEGFにより減少,TGFーβにより増加,tーPA産生能は逆にEGFにより著明に増加,TGFーβにより減少した.以上から,扁平上皮癌株はLa,腺癌株はLaに加えてCo,tーPA産生能を有することが判明した.また,扁平上皮癌株の増殖能および腺癌株の腺癌株の浸潤能(間質再生融解能)に対し,生理的濃度のEGFとTGFーβが相反する生物学的作用を有する可能性が示唆された.
今後は,Membrane lnvasion Culture System(MICS)を用い,癌細胞の浸潤能をより直接的に評価するとともに,癌遺伝子や間質融解酵素のmRNA発現に対する増殖因子の効果についても検討していきたい.
|
