Research Abstract |
当該研究の目的は,ポリクナール抗体作製の技法を基本としながら,モノクロナール抗体に準じた特異性と感度を有する抗体の作製にある。 今回,株化樹立喉頭扁平上皮癌細胞を材料に,粗扁平上皮癌関連抗原を分離し,ロトフォアによる等電点電気泳動法によって,4分画成分に分離された分画の中から,PI5.9の単一分画を分取し,これで家兎を免疫し,抗体を作製した。(YM59抗体) この抗体で認識される扁平上皮癌関連抗原の推定分子量は,SDS-PAGとWesterm blot法により還元処理材料で60KD前後である。またYM59抗体の扁平上皮癌培養細胞に対する陽性反応部位は,細胞膜(一部は細胞質)であり,ちなみに,EMA抗体およびPKK_2抗体では細胞質と反応し,K-ras(P21)抗体では細胞核と陽性反応を呈することから,YM59抗体は従来公表されているモノクロナール抗体とは異なるものであることが示された。YM59抗体の各種扁平上皮癌,腺癌および良性癌患組織に対する免疫組織化学的方法(ABC法)による検索では,陽性率がそれぞれ83%,18%,10.4%であった。最近抗腫瘍抗体の評価法として利用されているものに診断効率があり,診断効率(%)=(感度)×(特異性)÷100として示されている。YM59抗体の特性を明らかにするため,同一被検組織の連続切片標本に対し,EGF-R抗体,EMA抗体,PKK_2抗体およびK-ras(P21)抗体を用い,これらの成績を診断効率で評価すると,YM抗体は76.2%,EGF-R抗体は,44.2%,EMA抗体は48.8%,PKK_2抗体は35.6%,K-ras(P21)抗体は33.1%であった。これらの成績は,YM59抗体が扁平上皮癌の診断用抗血清として有用であることが示唆され,今後の臨床応用が期待出来る。
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