Research Abstract |
歯周炎の主因が,プラーク中の細菌であることは論を俟たない.しかし,歯周炎の発症には数多くの誘因も関与する.その誘因には,局所的および全身的原因がある.全身的原因のなかには,栄養障害,代謝障害,内分泌障害,アレルギー,自己免疫疾患などがある.自己免疫疾患では,血管炎がみられることが多い.とくに,血管炎が歯周組織に存在している場合には,歯周炎による組織障害にそれが加味され,組織破壊がさらに増強されて発現されることが考えられる.しかし,このことは具体的に明らかにされていないのが現状である.そこで,それを検証するために本研究を行った.自己免疫疾患のモデル動物であるMRL/MPJ-1pr/1prマウスを用いて,下顎左側臼歯の歯周組織にリガチャーによって炎症を惹起させた.その結果,歯肉溝上皮はびらんを呈し,上皮細胞間隙に好中球が浸潤した.また,歯肉溝上皮および接合上皮直下には,炎症細胞の浸潤が広範囲にみられ,それに続いて炎症細胞の結節状浸潤を示す血管炎がみられた.浸潤細胞はマクロファージ,リンパ球がおもであり,好中球も存在した.電顕的には,歯肉溝上皮の細胞間隙に好中球,そして歯肉溝上皮および接合上皮付近に,好中球,大きなdense bodyをもったマクロファージおよびリンパ球が認められた.免疫組織化学的にはThy1.2陽性細胞がみられ,L3T4,Lyt-2およびIak[2]の各反応性については良好な結果があまり得られなかった.組織化学的には,酸性ホスファターゼ活性強陽性の細胞が歯肉溝上皮および接合上皮下に多数集簇した.この酵素活性強陽性の細胞はマクロファージであると考えられ,この細胞は血管炎に起因して集簇しているようである.多数のマクロファージの集簇やリンパ球の存在は,炎症を生じた歯周組織が血管炎の併存によって,より広範囲に破壊されていることを示している.
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