1992 Fiscal Year Annual Research Report
フェノール性歯髄鎮痛薬のサブスタンスPを中心とした作用機序解明
Project/Area Number |
03670885
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
高橋 宏 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00084260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 つや子 福岡歯科大学, 歯学部, 助手 (40099065)
柴田 学 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40099049)
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Keywords | フエノール性歯髄鎮痛薬 / ユージノール / グアヤコール / サブスタンスP遊離 / カプサイシン / 神経原性炎症 |
Research Abstract |
炎症或は、疼痛に関する研究領域では最近、神経原性炎症という概念が新たに導入されている。知覚神経の豊富な器官では、侵害刺激に応じてまず、サブスタンスP(SPと略)が神経末端から逆行性に遊離し、これがtriggerになって肥満細胞からヒスタミンを遊離させ、更に他のケミカルメディエーターの生成、遊離を誘発すると考えられている。我々は、歯髄組織にSP含有神経が存在することを確認し、歯髄炎もまたSPが関与する神経原性炎症の一つであることが示唆された。そこで、歯髄消炎鎮痛薬として繁用されてきたフェノール性薬物が、SP遊離に関与しているのではないかと考え、SP遊離枯渇薬とされるカプサイシンを指標にしてユージノール(EG)、グアヤコール(GC)、チモール(TM)の鎮痛作用並びに血流増加作用、SP遊離作用について検討した。1.鎮痛作用は熱刺激、圧刺激、化学刺激の三方法で調べた。マウス脊髄内投与では、EG>GC>TMの順で鎮痛作用を認めた。しかしカプサイシンに比して約1/10の効力であった。2.レーザー式組織血流計(科研設備備品)によるラット足蹠皮膚の実験では、EGのみにSP拮抗薬によって消失する血流増加を認めた。これはカプサイシンと同様の作用であった。3.ラット下顎切歯6本の歯髄を細切し、特製のグラスチャンバーに入れ生食水で潅流する実験を行ったところ、EG、GCでは薬物投与に応じてSPが遊離することが認められたが、カプサイシンに比べて1/10の量であった。しかし脊髄切片からのSP遊離では、EG、GCはカプサイシン33μM/10μl投与と同等の値いであった。以上の実験からEG、GCなどのフェノール性歯髄鎮痛薬には、カプサイシンのように細経知覚神経末端からSP遊離枯渇化させ、その結果鎮痛作用を発現している可能性が強く示唆された。またカプサイシンを歯科用の歯髄鎮痛薬として用いる可能性も浮上してきた。
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