Research Abstract |
ニフェジピンは,虚血性心疾患、高血圧,不整脈等の循環器疾患に広く利用されている薬剤である。その作用機序は心筋及び血管平滑筋の興奮収縮関連に関与するCa^<2+>の細胞内への流入を抑制し,冠血管を拡張させ血流量を改善し,心筋の酸素消費量を減少させると考えられている。 副作用としては,胸部痛,脱力感,悪心その他ジフェニルヒダントインと同様の歯肉増殖症が報告されている。しかしながら,ニフェジピンによる歯肉増殖症についての報告は散見するにすぎず,その詳細は不明である。そこで我々は,ニフェジピンによる歯肉増殖の機構を解明するため,その第一歩として,ラットを用いた動物実験モデルの確立を目指した。 使用動物として,生後20日目の雄のFisher ratを用いた。試料として250mg/kgニフェジピンを含むCEー2を連続的に与えた。試料投与後,各々10,20,30,40,50日目に下顎骨を摘出し,下顎大臼歯部歯肉部分について通法に従い組織切片を作製して組織学的検索を行うと共に,同部歯肉の蛋白及びDNAの定量を行なった。また,投与ニフェジピン量による血中濃度の変化を調べるため,0,2.5,25,125,250mg/kgのニフェジピンを含むCEー2を連続的に与え,投与後40日目に心臓採血を行ない血中ニフェジピン量を測定した。 組織学的検索から,40日目以降において歯肉の増殖及び上皮下組織におけるコラ-ゲン線維の増加が認められたが,蛋白及びDNA量は対照群と比較して有意な変化は認められなかった。また血中ニフェジピン量は投与量に対してclose dependentに増加しており,250mg/kgニフェジピン投与では,約640ng/mlの血中濃度であった。以上の結果より,Fisherラットを用いた,ニフェジピンによる歯肉増殖の動物モデルが確立されたと考えられる。
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