1992 Fiscal Year Annual Research Report
ニフェジピン歯肉増殖症の発症に果たすTGF-βの役割に関する研究
Project/Area Number |
03670895
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
篠原 啓之 徳島大学, 歯学部, 助手 (60175388)
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Keywords | ニフェジピン / 歯肉増殖症 / 線維症 / カルシウム拮抗剤 |
Research Abstract |
降圧剤ニフェジピンの服用によって歯肉が線維性に腫大(ニフェジピン歯肉増殖症)することはよく知られているが、その発症機序については全く不明である。我々は、細胞培養系を用いて、この疾患はニフェジピン歯肉線維芽細胞に対する直接的な作用でなく、歯肉組織中に存在する何らかの因子を介した作用に起因することを既に明らかにしている。そこで、ラットを用いたニフェジピンによる歯肉増殖症モデルの確立を行なった。 生後20日のFischer系雄ラットに対して、カルシウム拮抗剤であるニフェジピンを経口投与した場合、投与量にはほぼ比例して血中ニフェジピン濃度の上昇が認められた。ニフェジピンを250mg/kg in food投与した場合には、ほぼヒトの極量に相当すると考えられる800ng/mlの血中濃度が確認され、この場合、ニフェジピン投与55日において、下顎大臼歯部歯肉部で著明な歯肉増殖を肉眼的に確認した。同部歯肉を顕徴鏡的に検索すると、結合組織中での線維性肥厚が認められ、炎症性細胞浸潤はコントロール群とほぼ同一程度であった。250mg/kg in foodの投与を行なった場合、投与30日目から有意に下顎大臼歯部歯肉の増殖が認められ、この増殖は以降70日目まで確認された。以上の結果から、ヒトにおけるニフェジピン歯肉増殖症のラットを用いた動物実験モデルが確認されたと考えられる。 炎症に関与し、かつ線維症を起こしうる因子としてTGF-βが、このニフェジピン歯肉増殖に強く関与している可能性が考えられ、我々は、この動物実験モデルからの歯肉組織を用いてTGF-βの役割を明らかにするものである。
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