1991 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドロキソ架橋型複核白金錯体の生成反応および化学反応の速度論および平衡論的解析
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03671038
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
千熊 正彦 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50025699)
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Keywords | 白金錯体 / 複核錯体 / ヒドロキソ架橋複核錯体 / 制がん制 / 反応速度 / 平衡定数 / 生物無機化学 |
Research Abstract |
本年度の実験計画に基づき、制がん活性を有する白金錯体がヒドロキソ架橋複核錯体(以下複核錯体)に変換される反応および複核錯体の化学反応性に関し、以下の2項目について詳細に検討した。(1)複核錯体生成反応の速度論および平衡論的解析。(2)複核錯体錯体と塩化物イオン(Cl^-)あるいは核酸との反応解析。 (1)について:複核錯体生成反応解析のために、pH緩和法とも称すべき新しい測定システムを構築し、シスプラチンおよびエチレンジアミン誘導体を含む白金錯体に応用した。すなわち、白金水和錯体の溶液に一定量のKOHを滴下し、直ちにpHの時間変化を記録した。得たpH緩和曲線を解析することにより、複核錯体生成反応のみかけの2次反応速度定数、活性化エネルギ-を計算することができた。また、反応が平衡に達した後のpH値から平衡定数を計算した。反応速度に影響を及ぼす因子を考察するために、本研究で測定した195PtーNMR化学シフト、和錯体の酸解離定数、およびアミン配位子の配解離定数との相関を解析した。その結果、アミン配位子の塩基性が錯体生成反応の速度に影響を及ぼしていることを認めた。(2)について:本研究に用いた複核錯体は高い制がん活性を有しているが、これら複核錯体の特質として生体内において種々の求核性物質と反応し開裂反応が生ずると考えられる。そこで、血中に多量に存在するCl^-およびがん細胞内の標的物質である核酸との反応を、前者は電子スペクトル、後者は円二色性(CD)スペクトル法により検討した。その結果、複核錯体はCl^-により開裂されるが、その半減期は、0.9%NaCl中37℃において約24時間と極めと大きいことを認めた。一方、複核錯体存在下での核酸のCDスペクトルの(正)極大は短波長シフトし、シフトの方向が単核白金錯体のそれと逆であることを認めた。このことは複核錯体の核酸に対する結合様式が単核白金錯体のそれとは大きく異なることを示唆している。 以上の知見は、制がん剤シスプラチンの作用機序および複核錯体のもつ特異な生理活性を理解するための基礎的情報を提供するものと考える。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Masahiko Chikuma: "Chemical and Biological Properties of Hydroxo-bridged Dinuclear Complexes of Anticamcr Platinum(11) Complexes" J.Pharmacobic-Dyn. 14. S125 (1991)
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[Publications] 千熊 正彦(分担執筆): "生体微量元素" 広川書店(東京), (1992)