1992 Fiscal Year Annual Research Report
Microdialysis法による脳、脳脊髄液内の薬物挙動の機構解明
Project/Area Number |
03671053
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
村上 照夫 広島大学, 医学部, 助教授 (20136055)
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Keywords | マイクロダイアリシス / 脳 / 脳脊髄液 / カフェイン / 回収率 / 脳分布 / 脳脊髄液分布 / 速度論的解析 |
Research Abstract |
マイクロダイアリシスの手法を、薬物の動態解析の分野に応用可能かどうか、即ち外部から投与された薬物の組織細胞間液中の濃度変化を経時的にまた定量的に測定することが可能かどうかについて検討した。さらに上記の知見をもとに、カフェインの脳組織中に於ける拡散速度や、脳組織-脳髄液間の移行等の測定を試み、以下の知見を得た。 (1)定量性について:薬物がカフェイン、サリチル酸およびヒスタミンのように比較的水溶性の場合、プローブ内透析液への薬物の回収率(組織濃度に対する比率)は一定の値を示し、経時的かつ定量的な測定が可能である。一方、ロイコトリエンのようにかなり脂溶性の薬物の場合、透析液への回収は全く認められない。以上のように、回収率、すなわち定量性は薬物間で大きく異なるものと考えられる。また、組織細胞内と細胞間液の薬物濃度がいずれの濃度に於ても、一定の濃度比を保つ薬物についてのみ、動態解析が可能と考えられた。 (2)カフェインの場合、透析液中への回収率が一定であり、脳組織や脳脊髄液中の薬物濃度を経時的にかつ定量的に測定可能であった。脳組織内における拡散速度を測定した場合、脳組織から血液への移行が優先し、組織内での拡散はほぼ無視される程度であった。脳組織-脳脊髄液間移行に関しても、血液間への移行速度が早く、髄液から組織への移行及び組織から髄液への移行はほぼ無視できるもの考えられた。 (3)単回静注投与したカフェインの血液から脳組織、および脳脊髄液への移行を速度論的に解析し、各部位に於ける薬物の経時的推移を良好にシュミレートすることが可能となった。 以上示したように、マイクロダイアリスの有用性は薬物間で大きく異なることが示された。更に種々の薬物を用い、知見を蓄積する必要が有ると考えられる。
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