Research Abstract |
本研究は高齢者の健康管理をする上でいかなる臨床検査を実施すべきかを目的とした。まず,高齢者の全身状態,栄養状態を客観的に示す血清総蛋白濃度(T.P),アルブミン濃度(ALB),末梢血の赤血球数(RBC),ヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht),白血球数(WBC)の6項目を取り上げ,早期空腹時に採血し測定した。対象は沖縄県那覇市と豊城村にある老人ホ-ムに入所している65歳〜96歳の152名。これら対象者は内科診察,尿一般検査で異常を認ず,老人ホ-ム内で健康な生活を送っている老人である。なお,対照群として定期健診を受診した30歳〜50歳の成人男女124名。 T.P,ALBは80歳代,90歳代の老人が対照群と比較して有意の低下を示したが,それぞれT.Pは6.9±0.4g/dl,6.8±0.5g/dlで低蛋血症を示すことはなかった。なお,T.P,ALBともに加齢に伴ない減少傾向を示した。また,老年者群で歩行可能群と不可能群でT.P,ALBを比較したところ歩行不可能群がALBで有意の低下を示した。 RBCは加齢とともに減少し,対照群との間に有意差がみられ,Hb,Htも加齢とともに低下があり,60歳代,70歳代では対照群との間には有意差はなく,80歳代,90歳代で有意差がみられた。なお,ウイントロ-プの赤血球恒数を求めたところ,平均赤血球容積(MCV)は70歳代から加齢に伴い上昇傾向がみられ,平均赤血球濃度(MCMC)は減少傾向が認められた。WBCは60歳代,70歳代,80歳代と減少しているものの対照群とくらべ有意差はなかった。 以上,血清蛋白検査,末梢血液検査の各項目について検討したが,上記の検討結果は高齢者の健康状態の指標となり,健康管理に不可欠の検査といえよう。今後さらに肝機能検査,腎機能検査についても検討を加える。
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