1992 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの生殖細胞欠損遺伝子terの発現様式に関する発生工学的解析
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03680037
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Research Institution | SHIZUOKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
野口 基子 静岡大学, 理学部, 助教授 (40021951)
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Keywords | マウス / ter(teratoma)遺伝子 / 生殖細胞欠損遺伝子 / 始原生殖細胞 / 不妊モデル / 再構成精巣 / 発生工学的解析 / 精巣性テラトーマ |
Research Abstract |
マウスの劣性突然変異ter(teratoma)は、精巣性テラトーマ高発系統129/Sv-terのter/ter型雌雄に、生殖細胞欠損をおこし、且つ、精巣性テラトーマを高率に発症させる(Noguchi&Noguchi,1985)。ter遺伝子をC57BL/6J等数系統に交配導入して、terコンジェニック系統を育成したところ、生殖細胞欠損は起こるが精巣性テラトーマを併発することはなくなった。129/Sv-ter及びterコンジェニック系統のter/ter個体での生殖細胞の欠損は、始原生殖細胞が後腸、腸間膜及び生殖隆起へと移動し増殖する時期から起きていた。昨年度までのこれらの知見からみて、ter/ter個体は始原生殖細胞欠損に起因する不妊のモデルとなりえよう。そこで、この始原生殖細胞の欠損が生殖細胞或るいは、それらの環境をなす体細胞のいずれに起因するかを明らかにする為に、生殖細胞と体細胞を種々に組み合わせた再構成生殖巣を用いる発生工学的方法が応用できるか否か検討し、次の実績を得た。(1)terが発現している始原生殖細胞の移動期を解析するため、始原生殖細胞を普通に含む+/+型胎仔の後腸の始原生殖細胞を体細胞から分離し、胎仔精巣の体細胞と組み合わせ懸滴倍養し、再集合塊を作った。それらを移植して発達させた再構成精巣には、精原細胞が分化し、129/Sv-ter系統の場合には、始原生殖細胞起源の精巣性テラトーマも分化した(日本動物学会発表、1992)。(2)129/Sv-ter系統の+/+型胎仔の精巣の回転管倍養法を検討し、始原生殖細胞から精原細胞の休止期を径て、増殖を再開させることができた(未発表)。 以上の結果は、ter/ter、+/+及び+/ter型間の再構成精巣を用いterの発現様式を発生工学的に解析することを可能にした。本年度、terの染色体上の位置と連鎖遺伝子座が判明した(日本遺伝学会発表、1992)ので、これまで不明であった胎仔のter遺伝子型の識別が可能になり、これらを合わせて目的の達成がより現実的になった。
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[Publications] Hashimoto,K.,Noguchi,M.,and Nakatsuji,N.: "Mouse offspring derived from fetal ovaries or reaggregates which were cultured and trans-planted into adult females." Develop.Growth&Differ.34. 233-238 (1992)
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[Publications] 野口基子: "マウス胎仔の再構成生殖巣の作出と応用 ー生殖細胞変異遺伝子の解明を目指してー" 実験医学. 10. 1566-1574 (1992)
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[Publications] Noguchi,M.Sato,M.Mori,N.,Hayashi,M.and Kusakabe,M.: "Cooperative roles of oocyte and follicle in ovarian parthenogenesis and teratocarcinogenesis in mice:Evidence from chimeric mice. in“Biology of the Germ Line,In Animals & Man"ed.by H.Mohri,M.Takahashi,& C.Tachi" Japan Scientific Societies Press KARGER, 14 (1993)