1992 Fiscal Year Annual Research Report
フレキシブルループのゆらぎと酵素機能に関する構造研究
Project/Area Number |
03680048
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
畑 安雄 京都大学, 化学研究所, 助教授 (10127277)
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Keywords | フレキシブルループ / ループのゆらぎ / 構造解析 / ATP / グルタチオン合成酵素 |
Research Abstract |
これまでの研究から、大腸菌産グルタチオン合成酵素のIIe226-Gly242に至るフレキシブルループ領域は、活性発現に重要な役割をすることが予期された。そこで、部位特異的変異法で調製した変異タンパク質を用いて酵素化学的・速度論的解析によりループの柔軟性と酵素活性の関係について研究した。 ループの柔軟性が変わるように設計した変異酵素のうち、G229A、G229V、G240Aは野生型酵素よりKmが大きくなって約30〜40%の活性低下が生じたが、残存活性15%のP227Vでは、K_0とKmの両方に変異の影響が認められた。また、活性発現でのループと基質の相互作用の重要性を調ベるために調製したR233AとR233Kは、数%程度の活性を示しかつ野生型に比ベて比較的大きなK_0とKm値を示したが、R241AとR241Kの活性およびK_0とKm値は、野生型のものと殆ど同じかそれ以上であった。G240VとDELは、完全に失活した。調製した全ての変異タンパク質の立体構造は、フレキシブルループ領域以外は野生型と本質的に同じであった。これらのことから、活性や速度論的定数はループの構造に大きく依存し、また、フレキシブルループが酵素の活性発現に不可欠であることがわかる。ループに柔軟性を持たす原因となるグリシンやブロリンに変異をかけると、その変異酵素のK_0値が大きく変化する。これは、ループが基質結合に関係していることを示している。グルタチオン合成酵素におけるループの柔軟性は、各酵素分子が異なる固有のループ構造をとっているのでなく、ループ自身のゆらぎとして理解すベきである。また、ループ中の2個のアルギニン残基のうち、Arg241は基質結合や酵素反応には関与せず、Arg233は基質の結合に関与していると思われる。従って、Arg233がグルタチオン合成酵素の活性発現に必須である。
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