1991 Fiscal Year Annual Research Report
神経成長因子の作用機構に関する分子生物学的・生化学的研究
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03680169
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池内 俊彦 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (20093362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畠中 寛 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (60208519)
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Keywords | 神経成長因子 / NGFレセプタ- / RTーPCR法 / 神経細胞分化 / コリン作動性細胞 / 初代培養脳細胞 |
Research Abstract |
脳神経系を構成するニュ-ロン群はその分化・生存維持に種々の拡散性の情報蛋白質群の影響を受けることが知られている。これらの蛋白質の中で最も研究が進んでいるのが神経成長因子(NGR)である。NGFの作用は、まずNGFレセプタ-に結合することから始まる。このレセプタ-には、低親和性レセプタ-(p75)と高親和性レセプタ-の2種類が存在し、最近trkAプロトオンコジ-ン産物がその一員であることが明らかとなった。NGFの作用をより明瞭にしていくためには、そのレセプタ-の発現調節を調べることが重要と思われる。本研究では、NGFに分化促進作用がみられた生後3日齢ラットからの初代培養前脳基底野コリン作動性ニュ-ロンにおける、NGFによるp75の発現調節の可能性を調べた。±NGF(100ng/ml)の条件で、0、1、3日後のp75 mRNAの発現をRTーRCR法で定量した。その結果、NGF添加群ではNGF無添加群より約2倍のmRNA増加が認められた。その上、この増加はNGF添加後1日目という比較的早い時期に起こり、1ng/mlの生理的濃度でも同様の増加が認められた。この結果は、NGFによるp75 mRNAの増加が、10^<ー11>Mのオ-ダ-の解離定数をもつ高親和性レセプタ-を介して起こっていることを示している。抗p75抗体を用いた免疫組織染色でもNGF無添加群に比べ添加群の方により強く染色される細胞が認められ、この細胞はその形態的特徴からNGFの作用が知られているコリン作動性ニュ-ロンと考えられる。以上の結果は、NGFが前脳基底野コリン作動性ニュ-ロンに対してp75の増加、即ちupregulationを起こす可能性と、NGFの作用がNGPレセプタ-の発現制御によってコントロ-ルされている可能性を示唆している。 今後は、trkA mRNAの発現が同様の制御を受けているかどうかを調べ、p75とtrkA遺伝子産物に共通する発現制御機構の解明を行う。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T.Hama: "Interleukinー6 improves the survival of mesencephalic catecholaminergic and septal cholinergic neurons from postnatal,twoーweekーold rats in cultures." Neuroscience. 40. 445-452 (1991)
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[Publications] T.Motoike: "Expression and localization of smg p25A,a ras p21ーlike small GTPーbinding protein,in cultured rat hippocampal cells." Neurosci.Lett.134. 109-112 (1991)
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[Publications] Y.Kushima: "Culture of neuronal cells from postnatal rat brain:Application to the study of neurotrophic factors." Prog.NeuroーPsychopharmacol.& Biol.Psychiat.(1992)
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[Publications] 池内 俊彦: "神経成長因子(NGF)作用の分子機構" 蛋白質核酸酵素. 36. 1211-1219 (1991)
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[Publications] 畠中 寛: "神経細胞死と神経栄養因子ー神経細胞死概論としてー" 代謝. 28. 891-899 (1991)
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[Publications] 榎戸 靖: "酸素毒性と神経細胞死ー培養中枢ニュ-ロンとPC12h細胞を用いたモデル系での解析ー" 代謝. 28. 923-931 (1991)
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[Publications] 畠中 寛: "神経成長因子ものがたり" 羊土社、東京, (1992)