1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03680193
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
生島 隆治 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (80027458)
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Keywords | 放射線 / ホルミシス / 低線量 / 適応応答 / 修復機構 |
Research Abstract |
低線量放射線のヒトに対するリスクを正当に評価するための基礎的な情報は、なお極めて不充分な状態にある。近年、ある領域の低線量照射は、刺激作用や活性化現象をもたらすことが実験的に明らかになりつつある。さらに、疫学的研究からも、同様の効果のあることが示唆されている。放射線にもホルミシス効果があるということであり、放射線防護や放射線治療の面からも大いに注目されている。生物個体の機能の基盤をなす細胞レベルでは、「放射線適応応答」とよぶベき一種の放射線ホルミシス現象が見つかっている。前もって、極低線量のβ線やγ線を照射された哺乳動物倍養細胞では、その後の高線量照射による染色体異常や突然変異の誘発に対して低抗性になる。研究代表者自身によるこれまでの研究結果から、この低線量放射線に対する適応応答は、細胞が環境ストレスに対して示す未知の細胞応答であり、染色体損傷の修復系の適応的誘導が関与していることが考えられる。本研究では、放射線ホルミシスの基礎をなす生物反応と考えられる適応応答の機構を解明することを目標とし、そのアプローチとして、他のストレス要因に対する適応応答と比較しつつ、低線量放射線に反応しホルミシス効果をもたらす遺伝子の実在を証明し、その発現過程の制御機構を明らかにすることを目指す。本年度は、昨年度に引き続き、チャイニーズハムスター(V79)培養細胞を用いて、(1)プロテインキナーゼC阻害剤の処理による抑制実験や(2)2次元電気泳動法による誘導合成蛋白質の解析などを行った。その結果、(1)プロテインキナーゼの介在する細胞内のシグナル伝達機構が、極低線量放射線照射による適応修復の誘導発現に関与する可能性、(2)極低線量放射線照射によって誘導合成される蛋白質は、金属によるものとはかなり相違していることなどが明らかになった。さらに、突然変異の誘発や放射線感受性ヒト細胞での実験も試みた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ikushima,T.: "Radio-adaptive response:an adaptive chromosomal DNA repair accompanying the induction of specific gene expression by low doses of ionizing radiation" Yokohama Medical Bulletin. 42. 121-127 (1991)
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[Publications] Ikushima,T.: "Radio-adapteve response:induction of a stress response that reduces the frequency of chromosomal damage by very low doses of ionizing radiation" Proc.Int.Conf.on‘Radiation Effects and Protection'. 229-233 (1992)
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[Publications] Ikushima,T.: "Radio-adaptive response:involvement of induction of specific gene expression by low doses of ionizing radiation" Proc.Int.Conf.on ‘Low Dose Irradiation and Biological Defence Mechanisms'. 255-258 (1992)
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[Publications] Ikushima,T.: "Adaptive response to low doses of ionizing radiation (in Japanese)" Jpn.J. Cancer Clin.38. 1299-1304 (1992)
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[Publications] 生島 隆治(分担執筆): "放射線抵抗性の誘導(放医研シンポジウムシリーズ23) 4.低線量放射線に対する適応応答" 実業公報社(色田 幹雄、山田 武編), 12 (1992)