1992 Fiscal Year Annual Research Report
農業協同組合思想の海外日系社会への伝播と変容に関する文化地理学的研究
Project/Area Number |
03680202
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 典隆 横浜国立大学, 教育学部, 助教授 (30166475)
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Keywords | 移民 / 海外移住 / 産業組合 / カリフォルニア / サンパウロ / 移民農業 |
Research Abstract |
第二次世界大戦前における海外の日本人移住地では、農業は最も重要な経済活動であり、日本人移民が特に多かったアメリカ合衆国のカルフォルニア州やブラジルのサンパウロ州においては、農業の発展に果した日本人移民の貢献は高く評価されている。両地域において、彼らの成功の基盤となったのは、民族的な協同の精神であり、それに基づいた農業協同組合の組織と活動であった。そうした農業協同組合の思想は、移住によって産業組合運動が展開されていた当時の日本から移住地に移植されたものである。本研究では、農業協同組合の思想が海外移住地への伝播していったプロセスを検討し、それが、カリフォルニアとサンパウロという異なった農業社会のもとで、どのように適用され、どのような機能を果し、そしてどのように変容していったかについて解明し、さらに、そうした考察に基づいて、カリフォルニアとサンパウロの日系農業社会の特質について考察を試みた。基礎的な文献資料の収集が進んだことは大きな成果であったし、農業協同組合の移植と変容に関して特に大きな成果が得られた。そのような協同の精神は、カリフォルニアにおいてもサンパウロにおいても、移民農業社会の発展のための重要な適応戦略となったが、移住地の自然環境、社会環境、農業の伝統、経済構造などに大きな差異がみられたため、異なった形態で展開され、さらに、移民農業や移住地の状況が変化するにつれて、徐々に変容していったことが明らかになった。今後、農業の観点からカリフォルニアとサンパウロの比較研究をさらに進めることによって、海外の日系社会に関する理解が深まることが予想されるし、そうした研究テーマは文化地理学にとって重要な課題であることを認識することができた。
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