1991 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエのdsx遺伝子における性特異的スプライシング機構の研究
Project/Area Number |
03680219
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂本 博 京都大学, 理学部, 助手 (00187048)
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Keywords | doublesex遺伝子 / transformer遺伝子 / transformerー2遺伝子 / 性特異的スプライシング / トランスフェクション法 / スプライシングの活性化 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
doublesex(dsx)遺伝子は、ショウジョウバエの性決定遺伝子のひとつであり、雌雄に特異的な発現をしている。この性に特異的な発現は、雌雄において異なるスプライシングによって制御されていることが知られていた。また、遺伝学的な解析から、性決定遺伝子であるtransformer(tra)およびtransformerー2(traー2)がdsx遺伝子の発現制御に関与することが明らかになっていたので、この制御機構を分子レベルで解明することを試みた。第一に、クロ-ン化されたdsx遺伝子をショウジョウバエ培養細胞へトランスフェクション法を用いて導入し、そのスプライシング様式を解析する実験を行なった。第二に、tra、traー2タンパク質を原核生物の系を用いて合成し、これらのタンパク質とdsxのmRNA前駆体との相互作用をin vitro系で解析した。その結果、tra、traー2産物によるdsx mRNA前駆体のスプライシングの制御機構に関して、以下のようなことが明らかになった。 (1)tra、traー2産物の両者が細胞内に存在する場合、dsxのmRNA前駆体は雌特異的なスプライシングを受ける。また、雄特異的なスプライシングはこれらの産物を必要としない。(2)dsx遺伝子の雌特異的第4エキソン内に存在する13塩基からなる特徴的な反復配列が、tra、traー2産物によるdsxのスプライシング制御に必須である。(3)この反復配列をもつRNAにtra、traー2産物が特異的に結合する。(4)tra、traー2産物は、この反復配列を介して一般に弱いアクセプタ-部位の活性化を引き起こす。 以上の結果から、tra、traー2産物がアクセプタ-部位の認識に関与するスプライシング因子と何らかの相互作用をすることによって、dsxの雌特異的スプライシングを活性化していることがはじめて明らかになった。
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[Publications] Hoshijima,K.: "Control of doublesex alternative splicing by transformer and transformerー2 in Drosophila." Science. 252. 833-836 (1991)
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[Publications] Watakabe,A.: "Repositioning of an alternative exon sequence of mouse IgM preーmRNA activates splicing of the preceding intron." Gene Expression. 1. 175-184 (1991)