1992 Fiscal Year Annual Research Report
高感度蛍光法による生体反応のマイクロ秒ダイナミクス
Project/Area Number |
03680227
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大谷 弘之 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (80203826)
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Keywords | バクテリオロドプシン / 光化学サイクル / 時間分解蛍光励起スペクトル / 時間分解蛍光色素プローブ法 |
Research Abstract |
前年度に完成した高感度時間分解蛍光測光装置を用い、レチナール系色素蛋白を含む膜断片の光反応におけるマイクロ秒〜ミリ秒経時変化を追跡する方法を可能とした。光化学サイクルや光退色反応は、従来、吸収分光あるいは共鳴ラマン散乱分光により研究されてきたが、蛍光法による研究方法が確立された。成果を以下に挙げる。 1.バクテリオロドプシンを含む膜断片の測定を行ない、光化学サイクルが蛍光法で追跡できることを明らかにした。その結果、吸収スペクトルからは識別しにくい中間体の挙動を極めて正確にとらえること、さらには共鳴ラマン法とくらべ、低い励起密度で測定が可能であるため副反応をおこさずに測定できた。 2.バクテリオロドプシンの光化学サイクルにおける中間体が生理的な条件とほぼ変らない幅射下においても第2の光子を吸収し、新たな光サイクルを形成することを見いだした。この反応の割合は膜懸濁液のpHや塩濃度に強く依存する。このことから量子収率の報告値の間の不一致の理由のうち少なくともひとつが明かになった。 3.反応中間体の励起スペクトルを測定することが可能となった。中間体が寿命をもつ内に蛍光励起光を照射し、発する微弱蛍光(少ない光子数)をとらえるためにこれまでノイズに悩まされてきたが、本年度購入した冷却器の効果は著しく、蛍光量子収率10^<-3>、濃度10^<-6>以下の中間体の励起スペクトルを測定できた。 本方法は高感度かつ高時間分解能を有し、従来より低い添加色素濃度で生体反応あるいは構造変化を追うことができるようになり、色素プローブ法の新しい地平をきりひらくものとなった。
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[Publications] 大谷 弘之: "Time-resolveol fluorometry of purple membrane of Halobacterium halobium:O_<640> and an O-like intermediate Q" FEBS Letters. 305. 6-8 (1992)
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[Publications] 山本 典孝: "Photoreaction of N_<560> intermediate in the photocycle of bacteriorhodopsin" FEBS Letters. 314. 345-347 (1992)
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[Publications] 大谷 弘之: "蛍光分光法 測定法講座 電気化学の周辺を探る機器分析入門" 電気化学. 59. 22-27 (1991)
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[Publications] 小林 孝嘉: "Primary processes in sensory rhodopsin and retinochrome" Proc. International Conference photobiology. 561-570 (1991)