1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03801019
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Research Institution | Kinjo Gakuin University, Junior College |
Principal Investigator |
西山 八重子 金城学院大学, 短期大学部, 助教授 (10164617)
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Keywords | 都市景観 / 社会的公正と都市空間 / 生活の論理 / 歴史的生活世界 |
Research Abstract |
本研究の目的は、都市景観形成の理念や政策・制度、市民参加などを、国内の諸都市と欧米の諸都市で比較検討し、「生活の視点」にもとづく空間形成のあり方を考察することにあった。この研究目的を明らかにする実施計画は、1.景観行政に意欲的に取り組んでいる都市自治体の事例調査 2.住民の意識調査 3.欧米の先進事例の研究から成っていた。実施は、1.と3.を中心に進められた。2.の住民の意識をアンケ-ト調査で考察する方法は、予備調査の段階で、研究テ-マが拡散する恐れを生じたため、1.の事例研究の数を当初の計画より増やし、市民参加の実態から住民の意識を明らかにすることとした。得られた知見は以下のとうりである。 都市景観の問題は、都市構造の基本的性格と関わらせて解明しない限り、単なるフィジカルな技術論にすぎなくなる。都市構造は、「経済的合理性や効率性を追求する者と、誰もが豊かな生活を享受する社会的公正さを追求する者が、都市空間をめぐって葛藤する対立関係」である。どちらの利益を擁護するかによって、都市政策や公的介入のあり方、自治体行政の役割、住民参加の許容範囲が解釈される。都市構造は、地域社会と深く関わりをもたない「大資本の論理」と地域社会の歴史に責任をもつ「生活の論理」の対立の場として都市を説明することであるが、注目すべきは、「大資本の論理」と「生活の論理」が共に、都市景観形成をめぐって地域経済の活性化を求めている点である。しかし、構造上相反する性格から、活性化を求める発想と方法が異なっている。この対立する発想と方法が、その都市の景観形成に具体的に影響している。都市景観とは、都市のインフラ整備が、地域の歴史的文化や歴史的生活世界と自然環境にどの程度調和しているかという問題である。いくつかの事例調査から、都市景観の成否が都市構造の力関係に依存していることが明らかになった。
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