1991 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀のドイツ語圏における、演劇作品に表現された歴史意識についての考察
Project/Area Number |
03801043
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
生田 眞人 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50140067)
|
Keywords | 歴史の進歩 / 神義論 / 皇帝神話 / 絶対王制 / 歴史劇 / 市民階級 / フランス革命 / 王制復古 |
Research Abstract |
古典主義のJ・W.v.ゲ-テ及びF.シラ-、そしてロマン派作家群を中心とする19世紀ドイツ文学ではなく、私の今年度の研究では、ドイツ語圏の演劇作品、特に歴史劇を新たに再評価しようと努めた。以下、今年度の研究、及び成果を箇条書きにして具体的に挙げる事とする。 1.今年度は特に、G.ビュヒナ-、Ch.D.グラッベ及びF.ヘッベルの三劇作家を主として研究対象とし、政治的にはフランス革命の影響を多大に受けて成立した彼らの歴史劇を解釈する作業と通じて、彼らの歴史観をを解明する事に努めた。特に18世紀啓蒙期、さらには初期ドイツ観念哲学の展開以来、19世紀及び20世紀のドイツ思想に決定的な影響を及ぼした重要なテ-マ「人間の神に対する対峙」を上記三人の作家につき集中して取り扱い、結論として彼らの演劇の「現代性」を導びきだした。これらの作家は、古典派の歴史、特に同時代の変革との関わりが稀薄である事を認識し、ビュヒナ-、グラッベ及びヘッベルは、新たなる歴史意識を涵養すべく、市民階級の自律性、及び主体性の樹立を志向する意図での歴史劇を創造していったといえよう。当時の絶対主義封建体制の残存という歴史的事実にかんがみれな、彼らの既存政治制、従来の価値観に対する懐疑、批判も肯首できるところで、彼らの否定の精神こそ、彼らの時代以後の新たなる歴史の展望、革新の社会の建設の寄与するところ大であった。あわせて、彼らの演劇が古典派及びロマン派に何故理解されるところ少なかったかの理由も、具体的に考慮した。 2.さらに他の論考では、Ch.D.グラッベの「ナポレオンもしくは百日天下」を詳細に解釈し、英雄としての皇帝という存在は、市民階級の権利伸長の時代に至っては滅びざる得ないとするグラッべの歴史観を解明し、グラッベの生き過渡期の時代精神を理解する事に努めた。
|
-
[Publications] 生田 眞人: "Das NapoleonーBild im deutschsprachigen kulturraum des19.JahrhundertsーEine Reflexion uber den kaiser alsMythosー(ドイツ語での論文。日本語訳;「19世紀のドイツ語文化圏における、ナポレオン像についてー神話としての皇帝に関する省察ー」)" ″PROTOKOLL″(プロトコル″〔図書〕、ドイツ文化センタ-). 16. 1-10 (1992)
-
[Publications] 生田 眞人: "「フランツ・グリルパルツァ-:歴史劇の完成」(ドイツ語の要旨:Franz Grillparzer:Vollendung des Geschichtsーdramas)" 「京都産業大学論集」(人文科学系列). 21. 140-165 (1992)
-
[Publications] 生田 眞人: "カ-ル・クラウスの批判精神と言語ー文学の伝統への反逆と帰依のはざまでー(独文:Sprache und Kritik bei karl kraus (1874ー1936)ーZum Spannugsverhaltnis von Ergebenheit und Ablehnung in der literarischen Tradition um die Jahruhndertwendeー" 「京都産業大学論集」(外国語と外国文学系列). 21. 139-164 (1992)
-
[Publications] 生田 眞人: "「単独者」の演劇と歴史意識" 「ドイツ観念論との対話」、第一巻. 1. 151-181 (1992)