Research Abstract |
当初の計画どうり、強く過熱した液滴の自励振動の実験観察,および理論解析を行った。300℃〜400℃程度の温度に保った金属の水平な板の上に,直径10mm程度の水,およびアルコ-ルの液滴を1個のせ,それが扁平な円板状を平均形状として,それからずれて振動する様子を,ビデオフィルムに記録した。水の場合は,平面形に波が8個〜2個現れるモ-ドがすべて実現したが,アルコ-ルの場合は2個および3個に限られた。従って,このような巨視的な流体運動にも,物質によって本質的な差が生じることが示された。板の上に液滴をのせた状態で,液滴内の温度分布を,熱電対(クロメル・アルメン)を用いて測定した。ただし,熱電対を挿入中は,液滴の振動は止まり,平均形状の状態であった。水について温度分布を求めたところ、上面から下面のすぐ上までは92℃,液滴の下面(過熱板に近接している面)は約100℃であり,液滴表面に温度の不均一があることがわかった。 この実験結果を基にして、液滴が自励振動を行う機構を理論的に解析した。液滴内の流速分布を,微小振動の場合についてすでに得られている形を仮定し,その振幅が時間の関数として未知とした。振幅に関する方程式は,液体について浅水波理論を応用し,液滴周辺の境界条件として表面張力の温度依存性を考慮した。そのとき,液滴の振動によって下面の表面部分が周辺に来たり,周辺から下面に戻ったりすることにより,周辺の表面張力が変動することを仮定した。これが,自励振動の主な機構と考えたわけである。解析結果は,波の数が4個以上のモ-ドについて,実験結果と一致する振幅と振動数が得られた。波の2個,3個のモ-ドについては,まったく異機構で自励振動をしていることが予想される。この現象は,熱平衡状態から大きくすぐれている状態で起きるが,それに対して非線形振動の考え方がある程度有効なことが示された。
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