1992 Fiscal Year Annual Research Report
非共鳴的光励起による励起亜鉛原子の反応ダイナミクス
Project/Area Number |
03804028
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梅本 宏信 東京工業大学, 理学部, 助手 (80167288)
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Keywords | 亜鉛原子 / 初期振動状態分布 / 初期回転状態分布 |
Research Abstract |
平成4年度は、励起一重項状態の亜鉛原子に着目し、メタン分子や水分子との間の反応性衝突について研究した。水分子は基底状態の亜鉛とその表面上で反応してしまうため、まず、パルスノズルを用いた高温流通セルの開発から着手した。このセルを用いて、共鳴励起一重項状態の亜鉛原子との反応によって生成する水素化亜鉛や水酸ラジカルの初期量子状態分布をポンプアンドプローブ法によって決定した。 水の場合、v=3までの水素化亜鉛が検出された。振動が基底状態の水素化亜鉛の回転分布は回転量子数の増加とともに量子数30程度まで増加した。これは、回転温度に換算すると約12000Kにあたる。一方、水酸ラジカルの回転分布は約1100Kのボルツマン分布で近似することができ、振動励起されたものは検出できなかった。これは、生成するOH基が、ほとんど反応に関与していないことを示している。このことから、反応は亜鉛原子がOH結合に挿入するのではなく、外からH原子を引き抜く形で進行するものと結論される。この結果は、励起三重項状態の亜鉛原子が水素と反応する際に挿入型の中間体を経て反応が進行するのと対照的である。 メタンでも、v=3の状態までの水素化亜鉛が検出された。振動が基底状態の水素化亜鉛の回転分布は回転量子数16付近をピークとするもので回転量子数の最大値は24であった。これは、回転温度に換算すると約3000Kにあたる。初期振動状態分布は、v=0:v=1:v=2:v=3が10:6:3:1であった。これらの振動・回転状態分布は、各生成物の運動の自由度にエネルギーがランダムに分配されると考える統計理論から予測される分布に近いものであった。このことから、励起一重項状態の亜鉛とメタンの反応は比較的長寿命の中間状態を経て進行すると考えられる。
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