1991 Fiscal Year Annual Research Report
スピンクロスオ-バ-錯体の動的挙動に対する外部磁場の効果
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03804032
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂口 喜生 理化学研究所, 分子光化学研究室・副任研究員 (30167423)
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Keywords | スピンクロスオ-バ-錯体 / 磁場効果 / ナノ秒レ-ザ-フォトシス / 温度依存性 / 鉄(II)錯体 |
Research Abstract |
反磁性(^1A)と常磁性(^5T)の間で変化するスピンクロスオ-バ-錯体とその同族体、鉄(II)トリス[4ー[(6ーX)ー2ーピリジルー3ーアザ-3-ブテミル]アミン(X=メチル×3,常磁性,水素×3,反磁性,メチル×2+水素,メチル+水素×2,スピンクロスオ-バ-錯体)を文献により合成した。液体窒素クライオスタットをナノ秒レ-ザ-フォトリシス系に組み込み、これらの化合物溶液の光化学過程を検討した。過渡吸収スペクトルには光退色のみが現われ、その形状は吸収スペクトルの形そのままであり、他の中間体のスペクトルは見られなかった。その結果、これらの錯体では、反磁性状態にある錯体の部分が光励起によって光の吸収強度の小さな常磁性状態となり、それが再び反磁性状態に戻るという過程を繰返すことが分った。更にこの過程の温度依存性とその磁場依存性を検討した。実験の結果、室温では100ナノ秒以下の寿命しかないこれらの過程が、170〜180Kではおよそ20倍の長い寿命を持つことが明らかとなった。また、常温近くでは指数関数的減衰を示するのに対し、低温では二次の反応式に従った減衰を示した。これは、低温では反磁性状態への復帰に常磁性分子種の相互作用が必要になることを意味している。これは磁場効果の出現を期待させる現象であるが、これまでのところ明瞭な磁場効果を観測することには成功していない。今後、より高い磁場での研究とO磁場付近の精密な測定を試みたい。ラジカル対に対する摂動効果は、これらの錯体が水に対して完全に安定とは言えないことが判明したため、年度内に検討できなかったが、分子鎖でつながれたラジカル対を生成させ、同様な実験を行って研究を行う予定である。
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