1992 Fiscal Year Annual Research Report
箱根火山の巨大地すべりと南関東の大地震との関係についての研究
Project/Area Number |
03804063
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大木 靖衛 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 教授 (30223754)
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Keywords | 地すべり / 箱根カルデラ / 二重山稜 / 北伊豆地震 / 岩屑流 |
Research Abstract |
箱根カルデラ南縁部において円弧状のカルデラ縁地形が600m横ずれしているのはこの部分で3kmにわたり巨大岩盤地すべりが形成されていることによる.この岩盤地すべりによりカルデラ縁の稜線が二重山稜となった.カルデラ縁のくい違いは箱根火山の下敷きになっている湯河原火山の山頂部が突出しているためと説明されていたが,この山頂部をなす安山岩質溶岩のK-Ar年代を測定した結果21±9万年前となり,箱根火山の古期外輪山溶岩であることが明らかになった.カルデラ南部の岩盤地すべりと同様な地すべり地塊が須雲川右岸の古期カルデラ壁,新期カルデラをかたづくる鷹巣山などを含め20ヶ所あることがわかった.1930年北伊豆地震(M7.3)ではカルデラ南部の2ヶ所で山津波が発生し犠牲者がでた.これらの山津波は大規模地すべりブロックと基盤岩との境界部に発生していることから,南関東で発生する大地震の際には地すべりブロックが移動するものと考えられる.カルデラ壁の傾斜は20〜30°であるが,地すべり地帯の傾斜は10°程度と小さく,地すべり地形を形成した運動が大地震のたび毎に繰り返し起きていたと推定される.近い将来に発生すると指摘されている神奈川県西部地震(小田原地震)に際し,箱根カルデラの巨大地すべりブロックと基盤岩との境界部は山津波についての対策が必要であろう.芦ノ湖南部の恩賜公園と畑引山で囲まれる湾部での湖底堆積部のボーリング調査を行えば記録の少ない歴史時代の破害地震の編年に役立つ貴重な情報を得ることが期待される.
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