1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03804068
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田口 幸洋 福岡大学, 理学部, 助教授 (00108771)
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Research Abstract |
金銀鉱床が存在する地域および周辺に湧出する温泉水のサンプリングを主に南九州をベ-スとし、比較対象地域として東北、および北海道東部を選定して行った。南九州の北薩金銀鉱床地帯は基盤の地質および地質構造が明かであるので、この地域の約60ケ所の温泉水の地化学デ-タをまず得た。その結果以下のことが明らかになった。 四万十層群の基盤から湧出する温泉は、火山岩が露出する地域にくらべ溶存成分が少なく、NaHCO_3を主成分とするCl濃度が低い温泉で(約30mg/l)、pHは9を越すアルカリ性のものであることがわかった。さらに、基盤より湧出する温泉は還元硫黄種に富んでいる(high H_2S/SO_4 ratio)事実が明かとなった。 一方、金鉱床を含む火山岩地域から産する温度は、基盤岩の四万十層群湧出する温度に比べ、溶存成分が多くClに富みpHは中性のもので、そして酸化硫黄種に富んでいる(high SO_4/H_2S)のが特徴である。 これらの温泉の化学的特徴は、金鉱床の成因に基盤の四万十層群が重要な役割を果たしていることを示唆している。すなわち、還元硫黄種に富む金を含む鉱化溶液が鉱液の酸化をまぬがれながら浅所まで金を運搬する保護容器として重要な役割を果たすことを意味している。そして、地下浅所での基盤岩と上位の火山岩類の境界部では上述の2タイプの温泉など混合が起きやすい場であることが明白であり、高品位の金鉱床で有名な菱刈金鉱床はまさにそのような地質環境に生成したものであることが明らかとなった。 すなわち、基盤の盛り上がりが金鉱床探査の重要な指針となることが従来経験的に言われていたが、化学的にその重要性を明からにすることができた。
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[Publications] Taguchi,S: "Comparative study of shallow and deep acid alteration in the Otake and Hatchobaru geothermal systems Kyushu Japan." Geological Survey of Japan Repart. No.277. 77-81 (1991)
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[Publications] Taguchi,S and Nakamura,M: "Subsurface thermal structure of the Hatchobaru geothermal system,Japan,determined by fluid inclusion study." Geochcmical Journal. 25. 301-314 (1991)
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[Publications] 田口 幸洋,北 逸郎,根建 心具,東 正治,志賀 美英,山本 温彦: "パプアニュ-ギニアの天水・温泉水の同位体に関する予察的研究" 秋田大学鉱山学部資源地学研究施設報告. 56号. 227-230 (1991)