1992 Fiscal Year Annual Research Report
食植性昆虫に対する植物の防衛手段としての寄生性天敵語引機構
Project/Area Number |
03806007
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大崎 直太 京都大学, 農学部, 講師 (70127059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 英二 京都大学, 農学部, 教授 (10026560)
佐藤 芳文 京都医療技術短期大学, 診療放射線技術学科, 講師 (80215871)
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Keywords | 植物 / 食植性昆虫 / 寄生性天敵 / 防衛法 / 誘引機構 / イヌガラシ / モンシロチョウ属 / アオムシコマユバチ |
Research Abstract |
アブラナ科植物のイヌガラシは、モンシロチョウ属の幼虫に食害されると、揮発性の物質を生成した。この物質は、幼虫の唾液と破壊された植物の液が混合されたときに生成されることが分かった。モンシロチョウ属幼虫の寄生者のアオムシコマユバチは、この揮発性物質に誘引され、寄主の探索を開始した。この物質の同定をガス・クロマトグラフィーを用いて試みたが、かなり重い物質であることが分かってきたが、まだ特定できていない。アオムシコマユバチは、この揮発性物質にのみ反応して、寄主の幼虫を探索した。従来、寄生者を誘引している物質は、寄生者自身が生成する体臭、唾液、糞などと考えられてきたが、チョウの幼虫はこれらの物質による手掛かりを消すことに成功している。しかし、植物が介在している食痕からの揮発性物質を消し去ることには失敗している。また、植物は機械的な傷を速やかに塞ぐが、幼虫による食害部を修復せず、数日間にわたり誘引物質を出し続ける。このことは、寄生性天敵の誘引物質は植物が天敵を呼ぶために積極的に生成している可能性を示唆している。しかし、寄生された幼虫は、植物を摂食する期間が延長し、摂食量も増加する。従って、植物の個々の個体には天敵を呼ぶ直接的な利益はないことが分かった。そのため、植物が天敵を呼ぶために積極的にこの誘引物質を生成していることを論証する理論として、(1)植物の群選択、(2)植物の血縁選択、の2つが考えられた。チョウの飛翔距離を考慮にいれると、植物の群選択は可能性の一つと考えられるが、検証が大変難しい。植物の血縁選択は、理論としては説得力は高く、検証できたならばこの分野に新機軸をうちだすが、チョウの行動圏よりも植物の繁殖圏の方が広いことを検証する必要があり、まだ検証するに至っていない。
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