1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03806014
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
上原 悌次郎 京都大学, 工学部, 教授 (90025982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60144135)
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Keywords | 真菌二形性 / エタノール / イノシトール / 情報伝達 / 膜の流動性 / OH・(ヒドロキシルラジカル) / 仮性菌糸 / Candida変異株 |
Research Abstract |
Candida tropicalis Pk233では、エタノール(ETHO)はphospholipaseC(PLC)を活性化して、イノシトール1,4,5-三リン酸(IP_3)の蓄積とCa^<2+>動員を介して仮性菌糸(PM)形成をもたらす。イノシトール(In)はリン脂質組成の変化を通じてETOHによる膜の流動性の上昇を抑えてPLCの活性化を妨げ、形態変化を防ぐ。ETOHでCAMP系の亢進も起こり、Inがこれを抑制する。OH・スカベンジャーでもあるETOHによるPM形成はFe^<2+>で抑えられ、H_2O_2がFe^<2+>の効果を促進する。酵母の形態形成における情報伝達と、特にOH・の役割の解明を目的に研究を行い次の結果を得た。 1.ETOHは菌の接種後直ちにPLCを活性化してIP_3の蓄積をもたらす。Fe^<2+>はこの効果を完全に抑制することがわかり、OH・と情報伝達、ひいては形態形成との関係が初めて明らかにされた。2.ETOHは膜の流動性の上昇を介してPLCを活性化し、OH・は膜の過酸化を通じて流動性の上昇を妨げると考えられるが、流動性の実測にはまだ成功していない。3.情報伝達亢進に伴うタンパク質のリン酸化については、菌の増殖期や培養条件に依存することがわかったが、明確な条件設定には至っていない。4.CAMPの役割も不明であるが、Saccharomyccs酵母では、エタノールもCAMPも仮性菌糸や、それと同様に出芽細胞の分裂抑制に帰因する"見かけの凝集"を引き起こすことを見出したので、この酵母を用いて解析を進める。5.キチン合成と分解については、菌糸形成に必須のキチン合成がポリオキシン感受性であることを実証した。キチンの分解についてはなお準備中である。6.変異株については、光に取得したアデニン要求株の染色体の変化を確認したので、細胞融合による二形性の解析への利用を準備中である。7.上記のように、Soccharomycesでもエタノール等による二形性の発現を見出し、しかもPLCの活性化の介在が実証されたので、Candida酵母で未解決の問題などの解析に利用したい。
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[Publications] 上原 悌次郎,山村 みどり: "酵母の温度適応" 日本醸造協会誌. 87. 773-779 (1992)
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[Publications] 上原 悌次郎: "酵母細胞の分化・形態形成とストレス応答" 細胞ストレス応答の化学と生物学. 3. 4-6 (1992)
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[Publications] Suzuki,Takanito: "Variation of colony morphology and chromosomal rearrangement in Candida tropicalis pk233" Journal of General Microbiology. 137. 161-167 (1991)
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[Publications] Kamiryo,Tatsuyuki: "Assignment of most genes encoding major perokisomal polypeptides to chromosomal baud V of the asporogenic yeast Condida tropicalis" Yeast. 7. 503-511 (1991)