1993 Fiscal Year Annual Research Report
モノクローナル抗体による固形癌由来細胞株の分化誘導に関する研究
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03807040
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Research Institution | Ehime University School of Medicine |
Principal Investigator |
河野 修興 愛媛大学, 医学部・附属病院, 講師 (80215194)
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Keywords | 分化誘導 / 乳癌細胞 / モノクローナル抗体 / 増殖抑制 / 細胞接着 |
Research Abstract |
平成5年度には、当初の計画通りYMB-S細胞の遺伝子レベルでの変異の有無とmRNA発現に及ぼす分化誘導物質の影響を検討した。 Southern blotting法によりc-myc,erb-B2,N-rasの癌遺伝子増幅がDNAに存在しているかどうかを検討したが、いずれも増幅していなかった。さらに、sodium butyrateによって誘導される分化、増殖抑制下において癌遺伝子の遺伝子発現が変化しているかどうかをNothernblotting法により検討した。しかし、c-myc,erb-B2,c-Ha-ras,erb-A,v-srcのmRNAレベルでの著変は認めなかった。したがって、YMB-S細胞に生じている変異には今回検討しえた癌遺伝子の関与は少ないものと考えられ、今後さらに多くの癌遺伝子の検討が必要であろう。 一方、YMB-S細胞に誘導される接着現象に関与している機構の解明については大きな進歩がみられた。細胞間接着において最も重要な役割をはたしている接着分子はE-cadherinと思われた。細胞間接着面にE-cadherinが集積している像がとらえられ、また、YMB-S細胞に誘導される細胞接着をマウスモノクローナル抗E-cadherin抗体が完全に抑制したからである。α_3β_1 integrinも接着面に局在していたが、その結合部位に対する抗体によって細胞接着は阻害されず、E-cadherinの活性化がこの細胞の接着誘導の第1段階として不可欠のものと思われた。 今年度の進歩として、KL-6抗体の認識する抗原であるKL-6がヒトムチンのうちMUC-1分子に属するムチンであることが明らかになった。したがって、抗MUC-1ムチン抗体が固形癌の分化を誘導可能であることが判明したのである。また、in vivoにおいて、ヌードマウス皮下に移植したYMB-S細胞の増殖に対して、KL-6抗体を腹腔投与することにより、有意に抑制することも判明し、in vitroでみられた分化現象がin vivoでも誘導される可能性が示された。
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[Publications] N.Kohno et al.: "KL-6,a mucin-like glycoprotein,in bronchoalveolar lavage fluid from patients with interstitial lung disease" American Review of Respiratory Disease. 148. 637-642 (1993)
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[Publications] H.Hanada et al.: "A new serum tumor markar,CAM 123-6,highly specific to pulmonary adenocarcinoma" Japanese Journal of Cancer Research. 85. 211-219 (1994)
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[Publications] N.Kohno et al.: "Difference in sero-diagnostic values among KL-6-associated mucins classified as cluster 9" International Journal of Cancer. (1994)