1992 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の加熱変性ゲルおよび自発ゲルのゲル化メカニズム
Project/Area Number |
03808008
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
勝田 啓子 新潟大学, 教育学部, 助教授 (50093555)
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Keywords | タンパク質 / 加熱変性ゲル / 自発ゲル / ゾルーゲル転移 / ゲル化点 / セグメント / 臨界濃度 / 水の構造 |
Research Abstract |
活性化エネルギーおよび自由体積分率とゲルの構造との関係を明らかにし、加熱ゲル化の反応速度論解析、架橋領域形成のためのセグメント算出、臨界濃度の算出などを行い、加熱ゲルのメカニズムを考察した。ついで、加熱無しに自発的にゲル化する現象を、8M尿素存在下、過酷な酸性およびアルカリ条件下、そしてポリリジン添加の場合のそれぞれについて、加熱ゲル同様の動的粘弾性の時間分散挙動としてゲル化現象を提示し、自発的ゲル化の開始時間の濃度依存性とゲル化反応速度論より求められたゲル化の平衡弾性率(G∞)の濃度依存性から臨界濃度を明らかにした上で、Oakenfull理論による架橋領域形成に関与するセグメント数算出を行い、Ross-Murphyの理論による比較して、ホエイタンパク質(特に主成分であるβ-ラクトグロブリン)が3〜4本のセグメントで架橋領域を形成していることを明らかにした。さらにゾルーゲル転移点を定量的に明らかにし、そのゾルーゲル転移に達する時間に、各種の試薬がどのような影響を及ぼすかを検討して、架橋領域の形成にはSS/SH交換反応と水素結合が大きな役割を果たしていることを明らかにした。そして、固有粘度の算出結果から、自発的ゲル化は、タンパク質の周りの水の挙動と密接に結び付いており、中間水の構造が乱され層が薄くなり、タンパク質および結合水が自由水の早い攻撃に曝されるためにタンパク質分子が解膠し、ゲル化が起こるというメカニズムを推定した。そして、タンパク質の水中での挙動という観点に立てば、自発ゲルはタンパク質分子の周りの水の構造を、化学的手段により乱しており、加熱ゲルでは、熱という物理的手段によって、この水の構造が乱されることにより起こる現象であることを明らかにした。結論として、分子ダイナミックスの観点からは、加熱ゲルも自発ゲルも本質的には同一の現象であるといえた。
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