1992 Fiscal Year Annual Research Report
無脊椎動物に存在する血小板活性化因子(PAF)の意義
Project/Area Number |
03808019
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
馬淵 清子 帝京大学, 薬学部, 助手 (30241277)
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Keywords | 無脊椎動物 / 血小板活性化因子 / リン脂質 / エーテル型リン脂質 / アセチルトランスフェラーゼ |
Research Abstract |
各種無脊椎動物におけるエーテル型リン脂質の分布を詳細に調べた。その結果、昆虫を除く様々な無脊椎動物に、アルキルエーテル型のホスファチジルコリンが、大量に存在していることが明らかになった。特にカイメンでは80%近くをアルキルエーテル型が占めていた。アルキルエーテル型ホスファチジルコリンは、血小板活性化因子(PAF)の前駆体と考えられるので、次に、PAFの分布を詳しく調べた。PAF様物質は、下等動物に広く存在していたが、とりわけナマコ、ミミズ等に多量に存在していた。ミミズに含まれるPAF様脂質を、ガスクロマトグラフィー質量分析で分析したところ、PAFそのものよりもプロピオニルPAFが多量に検出された。哺乳類とは異なり、少くともミミズではプロピオニルPAFがPAF活性の主体であると考えられた。プロピオニルPAFが、このように多量にみつかった例はこれまでになく、本研究が初めての例である。次に、PAFのこれらの動物における合成ルートを探るため、生合成酵素の活性を調べた。ミミズでは、修復系の酵素であるアセチルトランスフェラーゼの活性が強く、de novo合成酵素系の活性は低かった。ミミズではPAFは、アセチルトランスフェラーゼによって主として合成されていると考えられた。また、ミミズのアセチルトランスフェラーゼは哺乳類のものと異なり、界面活性剤に比較的安定であり、高濃度のリゾPAFを入れても阻害がみられなかった。この性質を利用して、酵素の可溶化にある程度成功することができた。一方、ナマコではアセチルトランスフェラーゼの活性はむしろ低く、de novo合成系の酵素活性の方が優性であった。PAFあるいはPAF様物質の合成ルートは、動物により異なっている可能性がある。
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[Publications] Takayuki Sugiura: "Production of platelet-activating factor in slugs." J.Lipid Res.32. 1795-1803 (1991)
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[Publications] Takayuki Sugiura: "Distribution of alkyl and alkenyl ether phospholipids and platelet-activating factor-like lipid in various species of invertebrates." Biochim.Biophys.Acta. 1126. 298-308 (1992)
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[Publications] Takayuki Sugiura: "Plateletactivating factor receptor:Signal mechanisms and molecular biology" CRC press, 184 (1993)