Research Abstract |
超好熱古細菌は100℃以上でも生育でき,そのタンパク質,酵素は通常の常温菌や中等度および高度好熱菌にくらべ,より高度な耐熱性,耐薬品性などの優れた性質を持つことが期待できる.また,超好熱古細菌の酵素の構造と機能に関する知見は,その耐熱化の分子設計を解明するうえでも,古細菌としての進化の面からも興味がもたれる.本研究では,数種の超好熱古細菌のNAD(P)要求性の脱水素酵素を検索し、Pyrococcus furiosus DSM3638およびP.woesei DSM3773などに高いNADP依存性グルタミン酸脱水素酵素(GDH)活性を見いだした.その精製を行い,酵素化学的な特徴を調べた.その結果,P.furiosusのGDHは粗酵素液よりRedーSeparose 4Bクロマトグラフィ-の操作によって簡単に精製できた.本酵素の分子量はゲル濾過法で300,000,サブユニットの分子量は52,000と算出され,本酵素は他の生物由来の酵素と同様に6量体構造をとることがわかった.脱アミノ反応ではLーGluに,アミノ化反応では2ーオキソグルタ-ル酸(OGA)に高い特異性を示した.酵素反応の最適pHは脱アミノ反応で8.2,アミノ化反応では7.4であった.基質のKm値はLーGlu(0.95mM),NADP(0.035mM),OGA(0.11mM),NH_3(6.3mM),NADPH(0.0071m M)であった.これらのKm値は他の生物由来の本酵素の場合のものと比較して総じて小さい特徴が認められた.超好熱菌由来の本酵素は予想どうり高い耐熱性を示し,105℃,30分間の熱処理でも失活せず,既知のアミノ酸脱水素酵素のなかで最も高い熱安定性を示した.また,広範囲のpH領域においても高い安定性を示した.本酵素のN末端から29残基のアミノ酸配列を決定し,他生物由来のGDHのものと比較した結果,低い相同性しか認められず,特徴的な一次構造を持つとことが明らかになった.一方,P.woeseiのGDHの精製を行い,高い耐熱性と酵素化学的性質がP.furiosusのGDHに極めて類似することを明らかにした.現在,両酵素の構造遺伝子のクロ-ン化を進めている.
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