1992 Fiscal Year Annual Research Report
日常状況における感情と認知の心理過程に関する認知科学的研究
Project/Area Number |
03831015
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
徃住 彰文 東京工業大学, 工学部, 助教授 (50125332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 悦子 法政大学, 社会学部, 助教授 (90217498)
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Keywords | 感情心理学 / 日常感情 / 状況認知 / 認知過程 / 計算モデル / 知識構造 |
Research Abstract |
日常場面において生起する感情過程を認知と行為決定のための過程と関連づけ、統合的なモデルを作成するための基礎的な知見を得ることを目的として実験をおこない、次のような成果を得た。1)道徳性に関する推論と感情喚起の関係について:道徳的判断を自然に喚起するような課題において、どのような推論と感情が併存するかを決定するための実験をおこなった。道徳的エピソードに対する発語思考をもとめ、プロトコル分析によって、反応を分類した。道徳性に関わる推論と、感情との共起関係を特定するための、プロトコル分類法を確立することができた。2)日常感情に関連する認知と行為決定の性質に関する追加実験:感情表現語を手がかり刺激とし、被験者の自叙伝的記憶の中から該当するエピソードを検索し、そのエピソードを構成する認知と行為決定の構造を尺度上の評定で記述するという実験をおこなった。感情を中心としたエピソード記憶の構造について、認知、行為それぞれ9ないし11の次元で記述できることがこの実験でも確認できた。3)見込み推論と感情:未来の事象についてどのような予測をたてるかということと、その予測が結果としてどのような感情体験をもたらすか、を確認する実験をおこなった。プロトコル分析を併用した反応分析によって、推論および推論が基づく知識と感情との関連に関する体系的な規則の系を導くことができた。以上のような実験的知見に基づきながら、日常認知における感情、認知、行為決定の統合的計算モデルを構築することが本研究の目的である。今年度は、協調的問題解決機構を用いた認知のモデルを構築し、事例ベースの推論と感情喚起過程について計算実験を試みた。感情の目標指向性と事例指向性という2つの特徴が、計算モデル上で表現可能であることが確認できた。
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[Publications] 徃住 彰文: "感情の認知理論と計算理論." 日本認知科学会シンポジウム「感情の認知科学」論文集. 1-12 (1992)
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[Publications] 徃住 彰文: "感性の計算理論." イマーゴ. 3(6). 168-177 (1992)
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[Publications] 徃住 彰文: "韻律生成の認知メカニズム." 言語. 21(9). 50-57 (1992)
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[Publications] 徃住 彰文: "常識心理学的概念としての心の概念の構造について." 日本認知科学会第9回大会発表論文集. 14-15 (1992)
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[Publications] 原田 悦子: "受話器の心理学的効果" 現代のエスプリ. 306. 75-83 (1992)