1991 Fiscal Year Annual Research Report
部位特異的変異導入によるテトラサイクリン/プロトン逆輸送機構の解明
Project/Area Number |
03833003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 明人 千葉大学, 薬学部, 助教授 (60114336)
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Keywords | テトラサイクリン / 薬剤排出ポンプ / アンチポ-ト / テトラサイクリン耐性 / 抗生物質耐性 / 大腸菌 / 膜輸送 / 部位特異変異導入 |
Research Abstract |
トランスポゾンTn10にコ-ドされたテトラサイクリン耐性遺伝子産物であるテトラサイクリン排出蛋白によるテトラサイクリン(TC)輸送機能に関与する機能アミノ酸残基の同定が大きく前進した。前年度までの研究で、テトラサイクリン排出蛋白(TET)の膜貫通領域に存在する3個のアスパラギン酸(Asp)残基と1個のヒスチジン(His)残基が機能に必須または重要な残基であることがわかっていたが、今年度の研究で、膜貫通領域では蛋白N末側とC末側にそれぞれ一組ずつ、これらのAsp,Hisを含む対称的な保存性残基カルテットが存在し、推定活性中心ポケット(基質結合認識部位)を形成しているらしいことが明らかになった。また、この基質結合ポケットの両側に細胞質側からペリプラズム側まで貫通したTC輸送チャンネルがあり、機能残基はこのチャンネルに通して、膜貫通ヘリックスの一側面にたてに配列していることがわかった。 チャンネルの細胞質側の入口、すなわち基質が入ってくる部分の重要残基についても知見が大きく増加した。これまで、入口ゲ-トを形成すると考えられるペプチドル-プ中のAsp^<66>残基が活性に必須であることがわかっていたが、今回,同一ル-プ上のArg^<70>が必須であることがわかった。これにより、ゲ-トには少くとも正負2個の荷電の必要なことが明らかにされた。また、このゲ-トル-プはβータ-ン構造を形成しているらしいことが推定された。驚くべきことに、TETの細胞質側表面に存在する9個の負荷電残基のうち、輸送機能に必須なものは、Asp^<66>のみであることが明らかにされた。一般に膜蛋白表面の荷電分布には内外で非対称性があり、荷電残基は重要な働きをしていると信じられていただけに、このような結果はこれまでの常識を覆すものである。更に、機能アミノ酸残基は固定的なものではなく、1個の欠損を別の残基が補える機構のあることが今回の研究で示唆されるに至った。
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